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執筆者の紹介
執筆者:
内閣官房企画官 岡本信一氏

プロフィール


神奈川県横浜市生まれ


東京大学経済学部経済学科卒業(公共経済学)


シラキュース大学(SyracuseUniversity)
行政大学院
(Maxwell School)卒業
(行政学修士(MPA))


米国連邦議会下院外交委員会事務局政策スタッフ(インターン)


内閣官房内政審議室、内閣中央省庁等改革推進本部事務局、内閣府国際平和協力本部事務局、 沖縄開発庁、総務庁、科学技術庁等の勤務を経た後、内閣官房地域再生推進室の企画官として、 東京都豊島区、島根県隠岐郡海士町を始めとして、全国各地の地域活性化に取り組む。 現在、内閣官房行政改革推進本部事務局に勤務。


著作等に「独立行政法人の創設と運営」(行政管理研究センター、2001年10月)、「地域再生の現場から」(株式会社ぎょうせい、月刊「地方財務」平成17年4月号〜平成18年3月号に連載)、「海士町の新たな挑戦〜「最後尾から最先端へ」〜」(株式会社ぎょうせい、月刊「地方財務」平成18年4月号)(「地方財務」に掲載された記事は、わがまち元気HP に転載されている)、【地域からの「文化力」発信】「廃校を拠点にまちなかをアートキャンバス化(東京都豊島区)」(株式会社ぎょうせい、文化庁月報平成18年9月号)等がある。
















アートが引き出す地域の元気
秋田県大館市アートプロジェクト
 ゼロダテ/大館展 2007
 
 
平成19年8月10日。秋田県大館市の大町商店街で空き店舗等となっていたもののうち19店舗等40フロアがアートの展示や創作、カフェ、大学と地域の連携の舞台として蘇りました。
 
 
これは、大館出身の首都圏で活躍する20代、30代、40代の3人のクリエイターが中心となり自発的に立ち上げたアートプロジェクトである「ゼロダテ」による取組で、地域のボランティア100人以上がこの活動を支えました。
 



ゼロダテ」(0/DATE)とは、DATE(日付)を(ゼロ)にリセットし、もう一度何かを始める、新しい大館を創造するという活動で、地元所縁の人々が、世代やジャンルや社会的地位等も超えて、大館を想う気持を共有し、それぞれの「大館」と共に歩き始めたものです。
 
この活動の起点となったのは、本年1月27日〜2月17日の間、東京神田錦町のアートスペースKANDADAで実施された大館アートユニット 「ゼロダテ」展でした。
 
東京の「ゼロダテ」展では、大館市の大町商店街の中心にあり、2001年5月に倒産した創業100年以上の老舗百貨店「正札 竹村」の直径4mの屋外看板を入り口正面に貼り付け、使用済みの数億円の商品券、閉店日に出社の打刻で終わっている社員タイムカードなどを展示し、廃墟化した「正札 竹村」の内部をデザイナーの石山 拓真さんが撮った映像作品を流すことで、大館所縁の人々の心の中にある大館のイメージを呼び起こし、それが現在失われている状況にあることを実感させました。
 
使用済みの数億円の商品券
(C) 0/DATE
 
そして、「人の記憶というものは、ただ昔を追想するだけでなく、新たな創造力を生み出す力になる」と言う考え方に基づき、未来志向で「新たな大館のイメージづくり」をしていくゼロダテの活動をスタートするに当たり、プロジェクトに賛同する市民を広く募集し、共に大館を元気づけようというネットワーク作りを始め、その試みの中で、参加表明をしたメンバーの個々のモチベーションをあげていく為に、漫画家の普津澤 画乃新(ふつざわかくのしん)さんの、一人一人の個性を引き出したキャラクターを描いた作品を併せて展示しました。
 
また、2月10日には、3人のクリエイターの母校でもある大館鳳鳴高校を舞台にした映画「好きだ、」の上映会が行われ、その中に出てくる美しい空等の大館の映像を見た後で、石川寛監督とのトーク&ディスカッションも行われました。
 
石川監督とのトーク&ディスカッション
(C) 0/DATE
 
東京での展示には、大館や秋田からも多くの方々が訪れ、東京近辺に出てきている大館関係者の間にも交流や連携の新たなネットワークが形成され、東京から地元大館を元気にしたいと言う思いは、多くの人々の共感を呼び、8月の地元大館での活動に結びついていきました。
 
8月の大館市の大町商店街でのゼロダテの活動では、100以上のアーティストや団体が参加した美術展示の他にも、その中心にあった老舗百貨店の前に特設会場を設けたライブ・コンサートや、今後の大町について考えるシンポジウム等も開催されました。
 
ゼロダテのリーダー格である東京芸術大学准教授の中村政人さんが、展示を行った建物は、20年以上もシャッターが降りていた店舗(ボンジュール)で、市民ボランティアが、事前に店内の清掃活動を行う等の準備を経て、壁紙の汚れやカビの臭いが残る空間に作品が運び込まれました。
 
ゼロダテの展示をいろいろと御覧になった地元のある方は、「最も印象に残ったのはボンジュールの展示。他の展示も夥しい数の犬の置物があったりして記憶に残ったが、後から、じわじわと心の中に記憶が戻ってきた。かつて、この建物の2階で日曜日に食事をするのがステータスだった。」と述べ、空き店舗をアート空間として利活用したことにより、過去の記憶と現在が結び合わされた中で、地域の人々が作品を鑑賞している様子がうかがえました。
 
18日まで行われた大館でのゼロダテイベントでは、大町商店街では最近見かけなくなった若い女性を始めとして9000人の人出(主催者推計)があり、16日には、例年行われる地域のお祭とも連動して、大町界隈は大いに賑わいました。
 
ボンジュールの展示
(C) 0/DATE
賑わう大町商店街
(C) 0/DATE
 
自分達の故郷に対する「想い」を、地元出身のクリエイターが持つ創造力から産み出された作品を通じて東京で呼びさまし、その活動の流れを地元大館にも繋げていき、数多くの空き店舗を利活用して街に活気を呼びさましたゼロダテの活動は、地域の人々や参加アーティストに自信と希望を与え、次なる活動への意欲も高まっています。ゼロダテの今後の活動が期待されます。