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執筆者の紹介


執筆者:小岩 和男氏



プロフィール


社会保険労務士FP小岩事務所 代表。 

1958年1月生まれ。

昭和57年3月中央大学法学部法律学科卒業後、東武鉄道グループ系列不動産会社に入社、営業経験後、人事総務部門で18年余り実務を経験、平成15年社会保険労務士試験合格後、開業登録。現在、東京 日本橋にて人事労務コンサルタントとして事業活動を展開中。著書「社員10人までの小さな会社の総務がよくわかる本」(明日香出版社)等、専門誌執筆多数。












高齢者雇用対策


●65歳までの高年齢労働者の雇用確保措置義務化

企業が定年制をとる場合は、高年齢者雇用安定法により、60歳を下回ることができないとされています。そのことにより60歳定年により、60歳でサラリーマン世界から卒業、第二の人生(セカンドライフ)へと生活設計を変えていく姿が、従来からの日本における基本パターン】でありました。
平成18年4月1日に同法が改正(一部平成16年12月1日施行分あり)され、この基本パターンから大きく高年齢労働者の雇用環境が変わることになったことはご承知のとおりです。
今一度、雇用する側の企業・団体としてこの内容を確認しておきましょう。

(ポイント)
65歳未満の定年制をとっている企業は、その雇用する高年齢者に対し65歳までの安定した雇用を確保するための措置(3パターンから選択)をとることが義務付けとなりました。(従来は、努力義務)


●法改正された時代背景

この改正の背景を見てみることにします。一つには昨今の超少子高齢化社会により、労働力人口が減少していることが挙げられます。最近の厚労省が公表した人口動態統計では、日本の人口が将来減少に向かっていることは記憶に新しいところです。高い就労意欲を有する高年齢者が社会の支え手となることが求められているのです。

また一方では、特別支給の厚生年金の支給開始年齢の段階的な引き上げが、始まっていることが挙げられます。男性の場合、定額部分が生年月日によって段階的に引き上げられています。(生年月日によって支給開始が遅れていきます。なお女性は、男性より5年遅
れのスケジュールです)したがって、収入の空白期間が生じますので、高齢者が年金(定額部分)の支給開始年齢(男性の年金支給開始年齢に合わせ男女同一年齢)までは働き続ける必要が出てきたわけです。国の方でも、このままの状態で放置するわけにもいきませんので法改正をし企業に義務化を求めたのです。

●65歳までの雇用確保措置の内容(3パターン)

では、企業がとらなければならなくなった65歳(注 ※)までの雇用を確保する措置とはどういうものなのでしょうか。法改正では3つの選択肢が用意されました。

3つの選択肢

 ツ蠻年齢の引き上げ 定年年齢自体を65歳まで引き上げる。

◆シ兮蓋柩兩度の導入

(現に雇用している者が希望するとき、その定年後も雇用する制度)
勤務延長制度 定年に達した者を退職させずに引き続き雇用する制度
再雇用制度 定年年齢に達した者をいったん退職させた後に再び雇用する制度
.定年制の廃止 定年年齢を廃止することです。年齢を理由に退職させることはできなくなります。雇用期間に終わりがなくなります。

(注 ※)
この年齢は、段階的に65歳までに引き上げられることになっています。

平成18年4月1日〜平成19年3月31日 62歳
平成19年4月1日〜平成22年3月31日 63歳
平成22年4月1日〜平成25年3月31日 64歳
平成25年4月1日〜             65歳


,鉢については、一律に定年年齢を引き上げることや定年制を廃止することで人件費の増大が予想されます。またについては会社側から退職をさせる場合に合理的な理由などが求められたりしますので、実際問題として企業がこの2つのパターンを導入することは難しいと思われます。


(ポイント)企業の現実的な対応としては、残った△侶兮蓋柩兩度という選択肢をとることになります。

理由としては、改正の趣旨は、高年齢者の安定した雇用の安定が図られたものであれば、必ずしも労働者の希望に合致した職種・労働条件による雇用を求めるものではありませんので、企業の実情に合った柔軟な制度の導入が可能になるからです。(短時間勤務や隔日勤務など可能)

●企業の現実的な対応としては、継続雇用制度

人件費負担増の抑制、制度の柔軟性から有効なこの継続雇用制度についてみてみることにいたします。導入方法は、前記の通り、勤務延長制度と再雇用制度の2形式があります。実際には、再雇用制度を取る企業が多いです。


【継続雇用制度の対象者に係る基準】

導入するには、原則としてこの制度を希望する者全員を対象とすることが必要です。


しかし現実問題として希望者全員を対象とすることは困難です。そこでこの制度の柔軟な対応として、労使でこの継続雇用制度の対象者となる基準を定めればこの基準に合致した者を対象とすることができるようになっています。


(基準の例:「働く意思・意欲」再雇用を希望し、意欲のある者
      「勤務態度」過去○○年間の出勤率○○%の者
      「健康」直近の健康診断の結果、職務遂行に問題がないこと
      「能力・経験」過去○○年間の人事考課が○以上であること など)


基準については、企業ごとで必要となる能力や経験等が様々であることから、労使間で十分に話し合いその企業に最もふさわしい基準を策定することが必要となります。


(ポイント)
ここでのポイントは、継続雇用の基準を決め労使で書面協定を結ぶということです。
法律では、定年後の賃金額など、また勤務日数や労働時間などの労働条件をいくら、何日・何時間と決めなければならないとは言っていません。
従って、基準は満たしたけれども、個別の労働条件(賃金など)で会社と当該社員の合意がとれない場合は、再雇用契約をしないこともありえるということです。

あくまでも今回の法改正の趣旨は、65歳までの段階的な雇用確保にありますので、肝心な賃金を含めた前述した労働条件については労使間で次のプランニングを含め十分に取り決めをしておかれるとよいでしょう。

●60歳以降の収入には賃金と年金と雇用保険からの給付金で設計


定年後の継続雇用制度を導入する場合には、賃金額の減額を伴うことが多いので、減額された収入を確保する目的で、公的給付を利用して従前収入の減額分を補填することができます。減額分全額補填という訳ではありませんが、年金と雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を使うことで企業側と労働者側相互にメリットがある収入設計が可能です
企業側では人件費のコストダウンが図れ、労働者サイドからも現役時代の賃金額とまではいかないまでも収入ダウンを回避できるのです。
ポイントは、職務内容の再設計と収入額のシミュレーションです。