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執筆者の紹介


執筆者:村田 英幸氏



プロフィール

1963年東京都に生まれる

1987年 早稲田大学卒業、司法試験合格

1990年 司法研修所卒業、弁護士登録

1997年 村田法律事務所開設

《著書》

『M&Aの法務 主要法制の完全整理』 中央経済社

『新会社法 株主総会までにやるべきこと』『新会社法は実務を変える!』『こうすれば再生できる!(個人・法人編)』
(以上、税務経理協会)

『現物出資等の財産価格証明の理論と実務』『倒産・再生の基礎知識』(以上、花伝社)

ほか多数。

HP:http://www.murata-law.jp









中小企業向け新会社法の基礎とポイント


  ここでは、非公開会社(定款で株式の全部について譲渡制度を設けている会社)である中小企業を中心に、皆様の関心の高い事項についてのみ解説をします。そのため、会計監査人、委員会設置会社については割愛します。


1.機関設計

 会社法では、取締役が最低1人必要ですが、取締役、監査役を置くことは任意になりました。会社法制定前からの株式会社(以下、会社という)では、取締役を設置し、かつ監査役を設置している会社とみなされていますが、定款を変更して、取締役や監査役を廃止しても構わないのです。旧商法では、取締役が3人と監査役が1人必要だったために、名義借りをしていた実態がありましたが、今後はそのようなことも不要になります。


 取締役会を設置しない会社では、取締役が2人以上いる場合には、定款で定めがない限り、業務執行の意思決定は、取締役の過半数をもって行います。各取締役は、会社の業務執行権・代表権を有します。
ただし、定款、定款の定めに基づく取締役の互選、株主総会の決議によって、代表取締役を決めることもできます。
また、取締役会を設置しない会社の株主総会、法律・定款で定められた事項に限らず、会社の組織、運営、管理その他一切の事項について決議することが可能となりました。

 また、会計参与という役員が新設されました。会計参与を設けるのは任意です。税理士や公認会計士に経理を依頼している会社が多かったため、会社の経理の信頼性を高めるために設けられた制度です。

2.役員の任期

 取締役の任期は旧商法では2年でしたが、会社法では、非公開会社については10年の任期が認められました。定款を変更して、登記を変更しておけばよいのです。今までは2年ごとに役員の改選を登記しなければなりませんでしたが、10年ごとの改選ですので、登記費用も節約できます。

 監査役、会計参与の任期についても同様です。

3.役員の選任・解任

 取締役、会計参与、監査役の選任は、議決権の3分の1以上の株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決議できます(普通決議)。なお、累積投票制度による場合は別ですが、割愛します。

 取締役、会計参与の解任は、普通決議で足ります。株主総会によるコントロールを重視すべきだからです。

 監査役の解任については、特別決議(議決権の過半数の株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の決議)が必要です。監査役の独立性を重視すべきだからです。
 いずれも、定款で、決議要件を加重することは妨げられません。

4.取締役会の書面決議

 旧商法では取締役の持ち回り決議は認められていませんでした。会社法では、取締役会の書面決議について、業務監査権限を有する監査役が当該議案について異議を述べないことを条件に認められました。

5.設立

 募集設立で発起人は1人でよいことになりました。旧商法では7人以上の発起人が必要であったため、名義借りなどがあった実態を改めたものです。
 最低資金制度はなくなりました。したがって、資本金を1円とすることも可能になりました。

 発起設立の登記に際し、旧商法では払込金保管証明書が必要だったのが、会社法では、払込みがあったことを証する書面(残高証明書でよい)を提出すればよくなりました。設立にかかる時間と費用を節約するためです。ただし、募集設立では株式引受人を保護するため、従来どおり、払込金保管証明書が必要です。

 現物出資・財産引受については検査役の調査が免除される範囲が拡大されました。すなわち、現物出資等の対象財産が資本の5分の1という制約がなくなり、500万円以下であれば免除が認められる等の改正がなされました。

 事後設立(会社成立後2年以内に会社成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得)について、検査役の調査の制度を廃止しました。事後設立で株主総会の特別決議が必要なのは、当該会社の純資産額の5分の1を超える場合に限定され、また、発起・募集設立によって設立された会社に限定され組織再編(合併、株式移転、株式交換)や組織変更の場合は含まれないことが明確になりました。

6.株式の譲渡制限

 譲渡制限株式の譲渡を承認する機関は原則として株主総会ですが、定款で別の機関を承認者とすることも認められました。
 会社は、定款で定めておけば、相続・合併等により譲渡制限株式を取得した者について、当該株式を会社へ売り渡すよう請求できるようになりました。会社にとって好ましくない者が株主になることを防止することができます。

7.種類株式

 種類株式を発行し、譲渡制限付き種類株式が認められるようになりました。旧商法では、一部の株式についてのみ譲渡制限を設けることはできなかったのですが、会社法では改められました。

 したがって、第三者の手に渡っては困る拒否権付き種類株式を譲渡制限にする、あるいは、譲渡制限付き種類株式を従業員に持たせるなど活用することが期待されます。
 なお、間違いやすいところですが、一部の種類株式について譲渡制限を設けている会社は、非公開会社ではなく、公開会社です。

8.配当

 配当は、剰余金の分配という形で、旧商法の年2回という制限なしに、配当財源がある限り、年何回でも可能となりました。

9.新株発行

 新株の発行・自己株式の処分については、公開会社の場合には、原則として取締役会で決定され、例外的に第三者に対する有利な価格での発行の場合には、株主総会の特別決議が必要です。非公開会社においては、逆に株主総会の特別決議で決定することが必要ですが、株主総会において特別決議により、募集株式の種類、数の上限および払込金額の下限を定めた上で、その他の事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することも可能です。

10.有限会社

 今後、有限会社は株式会社とみなされます。これを特例有限会社といいます。今後は有限会社を設立することはできません。また、商号の変更と登記により、有限会社から株式会社へ移行することも簡単になりました。