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執筆者の紹介


執筆者:上坂 朋宏氏



プロフィール

昭和33年福岡県生まれ。


昭和55年同志社大学商学部卒。


公認会計士、税理士。大手監査法人を経て、平成2年蠑綺箏弍張札鵐拭疾瀘。


現在、税理士法人上坂会計 代表社員、上坂公認会計士事務所長、蠑綺箏弍張札鵐拭実緝充萃役、螢薀ぅ侫妊競ぅ鷂Φ羹蠡緝充萃役、螢咼献優好▲ぢ緝充萃役、螢廛蹈哀薀潺鵐哀侫.好伴萃役会長などを務め、経営、会計、相続、FP、ITをカバーして、UesakaConsultingFirmグループを形成。顧問先は法人350件、個人150件。スタッフ数36名(平成19年1月現在)中小企業産業大学講師。
著作に『社員5人までの小さな会社の節税がよくわかる本』(明日香出版社)『儲ける社長はココが違う』『会計士が贈るヒント』『完全相続対策』(総合法令出版)『経理実務レッスン』(税務研究会)『資金運用ガイド』(税研情報センター)ほか。

HP:www.uesaka.ne.jp

MAIL:info@uesaka.ne.jp





資金繰りが悪くなる理由とその対処法


資金繰りが悪化に向かう転換点がどういったところにあるのかを、まず、書きたいと思います。


まずは、設備投資です。設備投資が資金繰りを悪くするその原因は、


■必要な金額が多額であること
■借入金の返済額と利益のアンバランス
■投資してしまったお金は、なかなかお金に戻せない
■投資によって、運転資金も増加する



という4つが大きな原因といえます。



■必要なお金が多額であること


自己資金が潤沢にあり、投資も自己資金の範囲内で行っているのであれば、問題はありませんが、多くの場合は、金融機関からの融資に頼ることケースが多いはずです。自己資金では賄えないほど、設備投資は、多くの資金を、必要とするケースがほとんどだということです。それは、自らが蓄積した資金ではなく、他人のお金を使って商売を大きくするということになります。これでは、当然に会社の資金繰りへと影響してくることになります。


■借入金の返済額と収益のアンバランス


 2つめは、借りたお金を返すための原資は、どこから出てくるのか?というところが論点になります。上述したように設備投資は、多くの場合、融資をうけて実行します。当然の話ですが、借りたものは、返していかなければいけないのです。そしてこの時に問題になってくるのが、借入金の返済期間と、その設備投資によって得られる利益の金額のバランスです。


1年間の返済金額 < 1年間にその設備が稼ぐ利益


という状態でなければ、利益が出ていても、資金繰りは悪化することになります。設備投資しなければ、負担しなくてもよい返済が発生するわけですから、投資した対象が、それ以上の利益を上げてこなければ、返済原資を他から融通しなければなりません。余裕資金が少なくなるのですから、資金繰りも当然に悪くなるといえます。


■投資してしまったお金は、なかなかお金に戻せない


 一度、投資してしまったお金は、なかなか最初に投資した金額のお金に戻すことができないことは、経験的によく理解できるのではないでしょうか。一部の地域で地価が上昇しているとはいえ、多くの地域で、地価は下落していますし、建物や機械設備も新しくても購入金とそれを売却する時の価格では、大きな開きが出でます。よって、思い通りの成果がでないからといって、後戻りはできないということです。ここを再度、踏まえた上で、設備投資を考えていただかなければいけないと思います。


■投資によって増加する運転資金について、考慮していないこと


 最後に、これは見落としがちなのですが、工場や製造設備、または倉庫などを新設した場合にはこの部分は特に注意が必要です。新しい工場や製造設備には、新規に追加で材料を投入しなければなりませんし、倉庫においては、追加の保管スペースができることになります。そこには、当然のように在庫 = お金が眠ることになります。よって投資する以前に比べて設備投資することにより、事業規模が大きくなり、運転資金も増加してしまうのです。


この4つが原因となり、資金繰りが悪化することが多く見られるのですが、どうしたらそうならずに済むのかといえば、


・自己資金の割合を増やす


・事前に資金計画を綿密に練ること



ではないかと思います。金融機関に、融資条件を少しでもこちらに有利になるように交渉することも必要でしょう。ですが、根本的には、借りるお金を減らす(自己資金の割合を増やす)、そしてさまざまケースを想定し、事前の資金計画を積み上げることが大切となります。設備投資が実際にうまくいき、収益に貢献してくれるかどうかは、現実にはだれにもわかりません。しかし、最悪のケースを想定し、準備しておくことと、そうでない場合では資金繰りに大きな差が必ず発生します。


 大企業では盛んな設備投資が行われおりますが、大企業と比較して、中小企業の設備投資は、諸刃の剣となる危険がより大きいといえます。よって、いつもに増して慎重な判断をしなければいけないのではないでしょうか。


資金繰りが悪化する要因は、設備投資以外には、大きく分けて2つあります。一つは、運転資金不足 と 赤字資金の補填 です。


○ 運転資金不足


 資金繰りが苦しいと感じるのは、当座の運転資金が足りないときに痛感することが多いのではないでしょうか。その原因を究明していくと、売掛金と在庫の増加にあることが多いのです。いわゆる運転資金が増加していることにあります。
 売掛金と在庫が増えるということがどういった状況であるかといえば、売上が伸びている時期にそういうことがおきることが多いのです。通常であれば、この2つが増加傾向にあるときは、売掛金の回収や在庫販売のペースよりの


販売が増える ⇒ 売掛金が増える
在庫が増える ⇒ 納品に備えて在庫が積みあがる


という状況にあります。
  このときには損益的には、販売も好調で利益の増加傾向にあります。しかし、資金的には、売掛金も、在庫もお金が増えているわけではありません。売掛金は、回収しなければいけませんし、在庫は、販売し、その代金を回収しなければ、資金として利用することはできないのです。よって、この回収と支払の差額を運転資金といい、この不足部分に充当する資金のことを運転資金といい、多くの会社の資金繰りが悪化する原因にもなります。


○ 赤字資金


もうひとつ資金繰りが苦しくなる原因は、赤字を続けることがあります。資金繰りをよくするためには、利益を出していく以外に、根本的な解決方法はありません。そして赤字資金の難しいところは、損益の進捗をチェックし続けることが大切であるとともに、この資金不足は、上記した運転資金不足との混合や、利益操作により、本当に赤字により資金不足が起こっているのか?という認識がしにくいということにあります。赤字が原因であれば、資金対策よりも利益をどうやって計上していくのかを先に考えなければいけません。
しかし、本当に赤字で資金繰りが悪化しているとの認識がなければ、運転資金の不足と混同してしまい、本当の改善のための行動がとれないことがあります。こういった面では、赤字による資金不足は、注意していくことが必要となります。


 以上、資金繰りが悪くなる原因を3つ挙げました。設備投資、運転資金、赤字資金 の3つです。資金繰りが悪くなる原因を押さえることの何が大切であるかというと、お金を使ってしまう前に、本当に必要な支出かどうか判断をしていただきたいのです。お金は使ってしまうと元には、戻りません。よってお金は、支出する前に、よく考え、押さえるべき支出は抑えなければいけません。支出してしまった後では、それを取り戻すことはできません。原因を理解することで、資金繰りを悪化させるようなお金の使い方や行動を抑制していただきたいのです。