ホーム > コラム > コラム第十四弾


執筆者の紹介


執筆者:矢萩 大輔氏
    (やはぎだいすけ)

プロフィール


●訖融・労務 代表取締役
●社会保険労務士
●東京商工会議所専門相談 員

350社を超える顧問先への指導・ヒアリングから、両者の立場を理解した人事コンサルティング手法を確立し、多くの会社から定評を得ている。
主な著書は「会社が得する就業規則」(九天社)「儲けを生み出す人事制度7つの仕組み」(ナナブックス)。




執筆者の紹介


執筆者:篠 晶子氏
    (しのあきこ)


プロフィール


●有限会社 人事・労務パー  トナーコンサルタント
●社会保険労務士


ES(従業員満足)向上で組織のパフォーマンスを高めることを目指し、管理職の育成のためのインバスケット演習等アドバイザーを担当。女性の活用やマナーをテーマとした大手派遣会社の企業向けメルマガなど執筆多数。

就業規則の作り方

【 その雛形、ちょっと待ってください。】


 就業規則を自力で作成しようとする際、条文を一から考えるケースは稀で、殆どの方は様々な経路で手に入れる「雛形」を使用されることと思います。


 しかし、行政機関などで無料で入手できる就業規則をそのまま利用することは、実は会社にとってたくさんのリスクがあります。なぜならば、それらの雛形には、法律上の義務である規定とそうでない規定が、特に注意書きもなく盛り込まれており、何の根拠もなく従業員に有利となる規定が多く含まれているからです。雛形就業規則を利用する際は、社会保険労務士などの専門家に相談するか、解説がしっかりと載っていて、信頼できる書籍などから入手されると良いでしょう。

【 監督署に提出するだけではもったいない!!
        これからの就業規則は『モチベーション向上型』 】



 就業規則には3つの段階があります。第1段階は、「法律上の作成義務を守るための就業規則」第2段階が「会社のリスクを回避し、裁判に勝つための就業規則」第3段階が「従業員のモチベーションを高め、会社の業績を上げるための就業規則」という順です。第1段階から第2段階へとすすみ、第3段階へ至って初めて完璧な形となります。

 第2段階までは想像がつきやすいと思いますが、「社員のモチベーションや会社の業績が、就業規則と関係あるのだろうか?」と思われる方も多くいらっしゃるかと思います。しかし、実際にそうなのです。
会社の資源である「人」「物」「金」「情報」のうち、人だけが唯一感情を持っています。


 社内に暗黙のルールがはびこると、そのことへの不満や不安が蔓延し、本来の業務に関係のないところに気持ちも時間もとられ、生産性は大きく下がってしまいます。


 また、理由を明確に理解した上で行動するのとそうでないのとでは、誰でもやる気に大きな差が出ます。会社のルールを明確化し安心を与えること、そして必要に応じて、社員のモチベーション向上につながるような、会社独自の規定を盛り込んでいくことが大変重要になるのです。


 会社は常に利益を上げて成長し続けなければなりません。就業規則も、会社の成長のためのひとつのツールであり、業績と密接につながっていることをよくご理解いただきたいと思います。


【 就業規則作成の3つの基本事項】




就業規則の作成義務がある会社とは

 労働基準法で作成・届出を義務とされているのは事業所単位で常時10人以上の従業員を使用する会社です。従業員数にはアルバイトなども含みます。仮に従業員が100人の会社であっても、どの本店支店にも10人未満の従業員しかいない場合には、法律上の作成義務はありません。しかし、「従業員のモチベーションを上げ、業績をあげる」ためには、会社のルールを明確にし、組織の一員としての行動指針を共有することが非常に重要であるため、是非とも作成をおすすめします。


就業規則に定めておかなければならない事項


 就業規則には、必ず定めなければならない「絶対的記載事項」(表1)と、定めがある場合は記載しなければならない「相対的記載事項」(表2)があります。

表1〈絶対的記載事項〉
始業および終業の時刻
休憩時間、休日、休暇に関する事項
労働者を2組以上に分けて交代就業させる場合の就業時転換に関する事項
賃金(臨時の賃金を除く)の決定・計算及び支払いの方法
賃金の締切及び支払いの時期に関する事項
昇給に関する事項
退職に関する事項(解雇の事由を含む)

表2 〈相対的記載事項〉
退職手当の適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに支払いの時期に関する事項
臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金に関する事項
労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
安全及び衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
その他当該事業場の全労働者に適用される定めに関する事項



就業規則は公開しなければ意味がない


 作成した就業規則を従業員に公開しない経営者の方も多く見受けられます。しかし、これでは全く意味がありません。社員に全く周知されなかった就業規則は効力を有しないという判決も出ています。そもそも、従業員が就業規則の内容をよく理解して初めて、会社としての規律を共有することが可能となるのです。
「周知すると従業員が自分の権利を主張してきて大変だ」との考えから、就業規則を隠そうとする経営者の方が時折いらっしゃいますが、今の時代それは全く逆効果です。インターネットで、簡単に、溢れるほどの情報を入手できる現在、働く人間の権利に関する情報は誰でも知ることができます。さらに、それら情報の中身は必ずしも正しいものばかりではなく、誤った知識をもとに会社への不信感を募らせるケースもあります。


 従業員にとって、安心とやる気は表裏一体となるもの。会社のルールである就業規則は、堂々と公開し、会社の方針を従業へ浸透させるためのツールとして、積極的に利用することが重要です。




【リスクを回避し、社員のやる気をUPする就業規則作成のポイントはこれだ!】





.瓮鵐織襯悒襯溝从としての休職・復職規定


現在のストレス社会において、精神的な不調を訴える従業員が多くなっています。

年 度
区 分
平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年
精神障害等
請求件数
341
447
524
656
819
決定件数
296
340
425
449
607
うち支給
決定件数
100
108
130
127
205
う ち 自 殺
(未遂を含む。)
請求件数
112
122
121
147
176
決定件数
124
113
135
106
156
うち支給
決定件数
43
40
45
42
66

(注))槁修蓮∀働基準法施行規則別表第1の2第9号の「業務に起因することの明らかな疾病」に係る精神障害等について集計したものである。決定件数は、当該年度に請求されたものに限るものではない。


 そもそも、休職は法律上の義務ではなく、会社が設ける任意の制度です。そのため、休職を命じられるかどうかは、就業規則での定め方次第ということになります。「1ヶ月以上欠勤したとき」に休職とするという規定では、精神的な不調の際に多く見られる、欠勤と出勤を繰返す場合に、休職を命じることができません。労務提供が不完全であったり、出勤と欠勤を繰返す場合に休職を命じられるように規定します。不調であることを知りながら勤務を続けさせた結果、そのことが原因で万一労災につながった場合、会社が責任を問われる可能性もあります。


 また、復職の可否を検討する際、従業員の担当医は本人の希望に沿った診断書を発行することがあるため、会社指定の医師の検診を命じられる旨も規定しましょう。


個人情報取り扱いの規定


 個人情報の大規模な漏洩が度々メディアなどで報道されています。そのほとんどが、顧客データの入ったパソコンを社外で紛失するなど、従業員の情報管理に対する意識の低さ故に起こっています。一人の従業員の「うっかり」が元で、会社全体の信頼を大きく損なう事態になりかねません。個人情報取り扱いに関する取り決めを明確に規定しましょう。


残業代の手当化について


 残業代を固定で支払っている、という会社の場合、その固定残業代に相当する時間数を就業規則にて明記する必要があります。例えば40時間分の時間外手当を「業務手当」として支払っている会社の場合、就業規則の賃金規程では、定めた手当が40時間の時間外労働分の給与であることを明記し、個々の労働契約書にてその時間数と金額を明示し、給与明細にも反映させます。実際の残業時間が定めた時間を超えた場合は、その超えた部分に対して時間外手当を支払うことが必要です。


げ鮓曚砲弔い


 従業員を解雇するには、客観的に合理的で社会通念上相当な理由が必要とされ、これを欠く場合は解雇権の乱用として無効となります。労働基準法で就業規則への解雇事由の明示は義務とされていますので、解雇にあたる事由を明らかにし、従業員自身がどのような場合に解雇になり得るのか予測できるように規定します。


ツ┣について


 就業規則に懲戒の種類や事由を明記して初めて、会社は従業員に対して懲戒を行うことが可能となります。懲戒のひとつである「懲戒解雇」も同様です。明記された事由以外で従業員を懲戒することはできませんので、会社の現状に即した懲戒事由を考えられる限り列挙し、程度に応じた懲戒の種類を明確に規定します。


 就業規則は一度作成してそれで終わりではなく、いつでも有効な状態にするために、法改正や、日々刻々と変化する会社の実態に合わせて見直しをすることが大切です。就業規則を整備して、やる気のある人財が集まり育つ会社づくりのために、大いに役立てて頂きたいと思います。