山出淳也 Jun’ya Yamaide

1970年生まれ

現代美術アーティスト、NPO法人 BEPPU PROJECT代表理事。
アーカスプログラムによるレジデンス(茨城県、1996-7)、ACCによる助成を受けNY、PS1でのインターナショナルスタジオプログラム参加(2000-1)。ポーラ美術振興財団の助成による欧州滞在(2002)。文化庁在外研修員としてパリに滞在(2002-2004)。

主な展覧会として「台北ビエンナーレ - THE SKY IS THE LIMIT」台北市立美術館(2000-1)、「my home is yours, your home is mine」ソウル(2000-1)、「GIFT OF HOPE」東京都現代美術館(2000-1)、「Strangers」PS1、NY(2001)、「PROJECT N0.26」メキシコシティ(2001)、「Exposition collective」Palais de Tokyo、パリ(2002)、「PROJECT No.20」John Michael Kohler Arts Center、アメリカ(2004)、「Weird walls」オランダ(2005)など多数。

はじめに
自然環境・資源に恵まれた別府と芸術活動が融合し、子供達が夢を持って生き生きと育っていくための環境作り、新たな価値を全国に発信しようとする団体であるBEPPU PROJECT(ベップ・プロジェクト)について紹介いたします。
別府市に48枚の琺瑯看板(ほうろうかんばん)を設置

別府市全体

満ちあふれたエネルギーが湯けむりとなり、いたるところから立ち昇っている大分県別府市。その中心市街地から南部地区にかけての路地に、48枚の琺瑯看板(ほうろうかんばん)が設置された。この看板には路地にまつわる物語とレトロなイラストと、路地の名前(この事業にあたり新たに命名されたものも含む)が記されている。


まちに設置された看板。
「cities on the book」
(2006年 BEPPU PROJECT)

この看板を設置したのはONSENツーリズム実行委員会とNPO法人 BEPPU PROJECT(ベップ・プロジェクト)。 この事業はまちを一冊の本にみたて、それぞれの看板が断片的にまちの記憶や歴史、物語を紹介するもの。地域住民への聞き取り調査で得た情報を抽象化した内容の看板は、それを見る人の想像と目の前の景色とを融合させ、いつもと違った視点でまちの新たな魅力を発見するための仕掛けを持つ。

参加・体験プログラム型イベント【オンパク】

散策ガイドブック
「まちの記憶に会いに行く
(2007年 BEPPU PROJECT)」


オンパクのプログラム


オンパクのプログラム

2007年春にはオンパク(主催:NPO法人ハットウ・オンパク)のプログラムの一環として、あちこちに散りばめられた看板を探すウォークラリーも開催し、その後BEPPU PROJECT編集による若い女性向けのフォトエッセイ風のガイドブックも出版された。

このオンパクは、地域住民によるまちづくりの運動から生まれた参加・体験プログラム型イベントで、初年度の01年からこの秋で7年12回目の開催となる。地域のプロモーションのためにコンセプトやテーマ、対象マーケット等の方向性を決めて、総合的に集客効果を上げる技術を磨き、その運営を支える予約システム、顧客システムなどのIT基盤整備も行っている。このようなオンパク的手法を他地域へ波及・移植する「ジャパン・オンパク」事業も昨年度から始まり、06年秋には「はこだて湯の川オンパク」が開催された。

その後、07年5月には長野県鹿教湯温泉(里山のパッセジャータ)でも開催、今後はいわき湯本温泉や、大分県内でのさらなる展開などで導入が図られる。さらに、07年度からは経済産業省の「地域新事業活性化中間支援機能強化事業」にてオンパク的な手法で全国20カ所程度の地域活性を行う3カ年計画を立案している。

オンパクの開催期間は毎回25日程度、プログラム開発数は約100種類、参加者数約3000人である。5000人の顧客を会員組織化、協力組織は200事業者にのぼり、オンパクの活動は地域の小集団、中小事業者、大学などを巻き込み多様な形で日常的に推進されている。その活動は温泉、食、健康、景観など、別府ならではの魅力をさまざまな切り口から商品化し、別府ブランドの再生を図るものである。こうした活動の成果もあり、1976年ごろから長期の客数の漸減期に入っていたこのまちも、ここ数年でようやく再生期へと推移してきた。

BEPPU PROJECTの活動

竹瓦温泉内部で開催された
音楽イベントの様子
(2007年 BEPPU PROJECT)


映画館で開催された
ダンスイベントに並ぶ観客
(2005年 BEPPU PROJECT)


中学校での授業時間に開催された
ワークショップ
(2007年 BEPPU PROJECT)

このようなさかんなまちづくり活動と平行して、別府から新たな文化を創造、発信しようとするのがNPO法人BEPPU PROJECTの活動である。BEPPU PROJECTは2005年より活動を始め、これまでに海外から現代音楽家を招聘しての滞在制作や世界的に著名な芸術家、宮島達男の別府市オリジナル作品からなる新作展、大分県初のコンテンポラリーダンス公演をまちに唯一残る映画館を舞台に開催し、国内のアートNPOが一堂に会する全国大会開催など、多種多様な事業を展開した。2007年には小・中学校に芸術家を派遣する事業や、港のリノベーション事業、創造都市(クリエイティブ・シティ)への転換を図るための国際シンポジウムの開催を終え、今後は文化ボランティアの全国大会開催などを計画している。

アートは人の心を豊かにし、人々の感性に訴え、深い感動を与えて、人々を様々な活動に導く。その文化のエネルギーが社会経済に影響を与え、新たな活力をもたらす。最近ではフランスのナント市、横浜市や香川県直島など多くの地域でアートによるまちの活性化、地域作りが盛んでそれぞれに大きな結果を出している。それらの事例からも、文化は豊かな市民社会を創出する役割を担い、社会を変革する潮流において非常に大きな力を発揮できると考えられている。

中心街を集積地として再生する計画
オンパクとBEPPU PROJECTの活動は、いずれも地域住民との恊働がなければ実現しない。今後いっそう地域住民との連携を図っていくためには、その集積拠点を中心市街地に置く必然があるだろう。BEPPU PROJECTは前述の国際シンポジウム(10月27、28日開催)のオプションとして、文化の力でまちを再生したフランス・ナント市の文化顧問ジャン=ルイ・ボナン氏や、世界35カ国の都市計画に携わっている創造都市の提唱者チャールズ・ランドリー氏らを招き中心市街地の資源ツアーを行った。その後のシンポジウムでは中心市街地に多数点在する空き店舗を建て替えるのではなくリノベーションし、文化の交流・発信拠点として再生させる計画についても論じられた。

別府市中心市街地活性化国際シンポジウム
「世界の温泉創造都市を目指して」の様子
(2007年 BEPPU PROJECT)

これは別府市の特徴である、観光客も地域住民も同じ湯につかって交流すると言う生活温泉文化を下敷きとした計画で、中心街を単なる商店の集積ではなく交流産業、創造産業と言った新しい産業の集積地として再生を目指そうとする計画である。それらの施設は中心街に位置する温温泉施設のように多数点在し、星座型ネットワークによってつなげられる。文化交流施設を分散型で面的に考えることによって、徒歩圏内の回遊人口を増加させ、その合間に残るであろう「スキマ」でビジネス展開を図ろうとする若い起業家の誘発が大きな狙いである。

そして、文化的なまちに生まれ変わろうとする別府市をおおいにアピールするための国際現代芸術フェスティバルを、全国の様々なNPOと共に、このエリアを中心として2009年春に開催しようと計画している。

両NPOの活動は、今ここにある資源への愛情と積極的なコミットメントによって、資源の保全を図り、より豊かな地域社会の形成、そして地域経済の活性化を目指そうとするものである。

今後どのように、このまちが新しい文化とツーリズムの発信の場へと変わっていくのかを見守っていただきたい。

NPO法人 ハットウ・オンパク
https://www.onpaku.jp/com/

NPO法人 BEPPU PROJECT
http://www.beppuproject.com

地域再生の現場から:温泉を活用した観光まちづくり−大分県別府市
http://www.wagamachigenki.jp/saisei/02_02.htm