監修

NPO法人 インディペンデント・コントラクター協会

専務理事
岩松祥典さん

1961年大阪市生まれ。京都大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。人事部、経営企画部、人材総合サービス事業部門営業マネージャー、関連会社の事業企画マネージャーを歴任後、2000年には上場SI企業の人事部長として転職入社。2003年、インディペンデント・コントラクターとして独立開業。有限会社アールピック代表取締役の現在、中小企業における人材採用・教育に関する業務請負を中心に活動中。
専門スキルを持った個人がただいま増加中

最近、「IC」という言葉が注目を集めている。

ICとは「インディペンデント・コントラクター」の略で、日本語に訳すと「独立業務請負人」。期限付きで、専門性の高い仕事を業務単位で請負契約する個人を指している。

「アメリカではすでに900万人近いICがいて、日本でもおそらく200万人以上のICが活躍しているのではないでしょうか」と、インディペンデント・コントラクター協会(以下IC協会)専務理事の岩松さんは語る。 「正社員神話の崩壊、ITの発達などにより、『雇われない、雇わない』ICという働き方を選ぶ人が増えていくことは確実でしょうね」(岩松さん)とのこと。経営者としては、人材アウトソーシングの新しい形として、ICを有効活用すべき時代が来たと言えそうだ。

特定非営利法人
インディペンデント・コントラクター協会


請負領域※重複回答有 割合(%)
経営企画、事業戦略/計画 17.3
組織人事・採用・教育 15.1
セミナー講師 13.0
IT・情報システム 9.7
新規事業開発・立ち上げ 9.2
営業・販売戦略、代行 6.5
マーケティング 5.4
財務会計・総務法務・広報 4.9
クリエイティブ関連 4.3
海外ビジネス 3.8
生産・技術・物流 2.7
年齢 割合(%)
20代 2.2
30代 25.9
40代前半 28.1
40代後半 23.8
50代 15.7
60代 3.8
70代以上 0.5


会員数 185名(2006.1月現在)


ほしいと感じたらすぐに、専門スキルを借りる

では、実際にはICはどのような形で業務を行っているのか。自らもICとして活動する岩松さんの場合を聞いてみた。

「私の場合は、今までのキャリアを活かして、主に中小企業の『人材採用・教育』をサポートしています。例えば、ある企業が新分野への事業拡大を行いたい場合、人事面においても、まずやらなければならないことが数多くあります。

  ・ どのような組織作りをするか?

  ・ どのような能力を持った人を採用すべきか?

  ・ 実際に誰をどういう手法で採用するか?

  ・ どのような企業風土を作るべきか? 

  ・ どのような評価制度を設けるべきか?

などといったことを考えていく必要がありますね。

ところが、これらを推進していく適材を社内で見つけられなかった場合、社内で早期に育成していくか社外から調達しないと、事業が進んでいきません。とはいえ、社内には人事のプロがいないので、中途半端な人事施策しか打てないわけです。 かといって、そのために人材開発(採用・教育)を担当できる管理職クラスを常時雇用するほどの余力はない。

そういうときに、私の場合は、新事業を立ち上げるための人事施策を打って、その事業がある程度結果を出せるようになるまで、採用・教育・人事面を一貫してお手伝いします。そして、成功の形が見えたところで契約を終了とさせていただきます」(岩松さん)とのこと。

ほしいと思った時に、高い専門スキルを期限付きでICから借りる。そうすれば、プロジェクトの進行を迅速かつ高いレベルで行え、務めを果たした人材を“永久雇用”するリスクからも解放されるのである。

銀行融資専門の元支店長、焼肉開店支援のプロといったIC

では、岩松さんの所属するIC協会にはどのような人材が登録しているのだろうか。 「そうですね、例えばM&Aの専門家もいますし、株式公開のプロも2人登録しています。あるいは元銀行の支店長で、銀行から融資を受けるにはどのようなことをしたらよいのかを具体的に指南しているプロもいますね」と岩松さんは語る。

そのほかにも「かつて商社マンとして中国大陸を飛び回っていて現地にネットワークを持っている方もいますし、ファッション業界専門のマーケティング担当もいます。焼肉店の開店支援を専門的に行っている方は『炭火はどこのものを使うと良い』というような、非常に高い専門知識を持っています。IT業界に特化した販売代理業に携わっている専門家は、契約した20社以上の製品を組み合わせつつ、クライアント・ニーズに応えるシステムを販売しているようです。また、今まで付き合いで替えられなかった仕入先を、経営者に代わって切り替えることで、億単位のコスト削減を行った購買のプロもいます」(岩松さん)とのこと。

「IT、物流、商品開発」などの分野でもICをたくさん有効活用することで、中小企業の経営上により大きな成果を挙げられるはず、と岩松さんは語る。

「会社をIT化していくには、どのようなネットインフラを組んでいくかを考え、実行していく『ITコンシェルジュ』のような役割が必要です。けれども、中小企業の場合、その担当者に1年間365日お願いできる仕事があるかというと、そうでないことが多いんです」(岩松さん)

また、「物流にも注目をすべき」と岩松さんは言う。「物流のような分野は、営業などの“花形”に比べて影が薄い印象がありますが、これこそ劇的にコスト削減の成果が現れる業種といえます。物流専門コンサルタントのICは『どこの倉庫を使い、どの輸送ルートに変更することで○○円のコストダウンが可能』というアドバイスを行っているそうです」

そして、商品開発。「私たちが大事にし、経営者の方々に重宝されているのは、『その会社』と『第三者』の視点を持ち合わせていることだと思います。ですから、今までやってきた開発の方向性に対して別の視点を投げかけながら、業務をサポートすることが求められています。また“事業部門間の壁”を取り払って部門間で情報共有をしてもらうこと。これも独立業務請負人であるICだからこそできる役割だと思っています」

ICと契約を結ぶためのアクセス先は?

現在、ICと契約を結ぶには、岩松さんの所属する「インディペンデント・コントラクター協会」のほか、リクルートの雑誌『アントレ』のサイト「プロワーカーバンク」、伊藤忠系の総合人材企業「キャプラン」などが相談を受けてくれるはずだ。

   
          「IC協会」        「プロワーカーバンク」        「キャプラン」


また、気になる契約料金だが、これは応相談。「専門スキルを提供させていただくので社員の方々よりは高い報酬をいただきます。けれども、コンサルティング法人のようにオフィスの賃料や新入社員の育成料などの固定費が乗らない分は、リーズナブルと言えると思います」(岩松さん)とのこと。

機密情報保持に関しても、初めに「万が一の場合は損害賠償云々」といった契約書を交わすため、契約意識は非常に高いようだ。また、自分の専門分野を超える内容に関しては別のICなど最適人脈を紹介してくれるなど、あくまでも「成果を出す」ということを第一に仕事を行っている。

課題解決の新しいアウトソーシングの形として、一考してみてはいかがだろうか。