五十嵐 和也
(イガラシ カズヤ)

【職業】
中小企業診断士
SNGS理事(広報部長)

【経歴】
・一部上場メーカーにて、流通業担当のシステムエンジニアとしてシステム構築を経験。
・中小企業診断士取得後、コンサルティング部門に異動。
・コンサルタントとして多数の企業コンサルティング・業界分析を実施、現在に至る。
・SNGS理事(広報部長)

診断士ネットワーク
ゴールデンサミット(SNGS)
http://www.sngs-web.jp

 

熊谷 学
(クマガイ マナブ)

【職業】
中小企業診断士

【経歴】
・平成元年 京都工芸繊維大学 卒業
・平成元年 イトキン株式会社 入社
・平成18年 イトキン株式会社 退社
・平成18年 熊谷中小企業診断士事務所 設立

診断士ネットワーク
ゴールデンサミット(SNGS)
http://www.sngs-web.jp


はじめに

 今年の冬は異常と思えるほどの暖冬であった。この「暖かすぎる冬」を体感して、多くの人が環境への危機感を募らせたのではないだろうか。このような中、我々SNGS(診断士ネットワーク・ゴールデンサミット)は昨年度「eco japan cup 2006」という環境ビジネスコンペに参加した。

■SNGSとは若手中小企業診断士有志が結成した、2005年発足の専門家集団である。
(URL:http://www.sngs-web.jp)


1.環境ビジネスの全体像

(1)環境ビジネスの概要

 環境ビジネスとは、環境の保全、環境への負荷を低減するための製品・サービスを供給するビジネスである。環境省の調べによると、その市場規模は2010年約47兆円、2020年で約58兆円となり、今後大幅な成長が予測されている。(図表1)


(2)環境ビジネスの質的変化

 環境ビジネスは以前から認知されていたが、従来型ビジネスの枠組みにおける環境への取り組みは、コストアップ要因としてとらえられていた。また、多くの人手を費やす慈善事業的な一面もある。そのコスト負担をいかに分散させていくかが課題であり、環境ビジネスは遅々として進まぬ状況にあった。

しかし、京都議定書の発効あたりから環境ビジネスの流れに変化が生じはじめた。わずかながらではあるが、 「儲かるビジネス」へと変貌しているのである。現に、ヨーロッパやアメリカ、中国などでCo2排出権マーケットが誕生しており、企業単位での売買も今後飛躍的に高まることが予想される。また、新エネルギーへの取り組みや、教育・情報サービスの提供などの市場は、活況を示しつつある。まさにビジネスとして黎明期といえる。


2.中小企業にチャンスあり

(1)市場の多様性

そもそも環境ビジネスは装置産業と考えられており、主役は資本力のある大企業と考えられていた。しかし、環境ビジネスは多様化しており、今後裾野が広がることは明らかである。それゆえに、ニッチ分野は増加し、中小企業にとって活躍の場が用意されているといっても過言ではない。


(2)黎明期から成長期へ

近年のIT産業の例を挙げるまでもなく、黎明期から成長期に移行する過程において、中小企業には大きな期待が寄せられ、また成果も上げてきた。大企業には真似が出来ない新たな商品やサービス、その開発は創造性・機動性・多様性のある中小企業にこそ優位性がある。 このような中、我々は環境省が主催するeco japan cup 2006へ参画し、中小企業診断士と環境ビジネスの可能性を探った。


3.eco japan cup 2006の概要

(1)コンセプト

eco japan cup 2006とは、環境省、銀行、NPOが主催する、環境ビジネスコンペであり、「環境ビジネス・ベンチャーオープン」と「エコチャレンジ」という2つのコンテストで構成される。前者は実際にビジネスを立ち上げている事業者向けコンテストであり、後者はこれから事業を立ち上げようとしている個人・団体向けコンテストである。
環境に特化したビジネスコンテストとしては日本最大級であり、 「エコロジーで大儲けする人がいないと、環境問題なんて解決しない」というキャッチフレーズが特徴である。これまで環境といえばボランティアベースでの活動が主流だったことを考えると、斬新なコンセプトといえよう。


(2)スケジュール概要と体制

eco japan cup 2006では審査や賞提供に留まらず、応募者向けセミナーやアドバイザリーなど、様々なサービス提供を行った。(図表2)
環境ビジネスを考える上では、環境面と事業面の両面から検討することが欠かせない。そこで本コンテストでは、事業面を我々SNGSが担当し、環境面については、環境カウンセラー全国連合会が担当した。そして、企画推進を銀行、NPOが担当し、全ての統括を環境省が行うという体制であった。


4.中小企業診断士のかかわり

我々SNGSでは、応募用紙検討や応募者向けセミナーの実施、アドバイザリー、そして応募支援コンサルティングなどを行った。本号ではこれらの概要について述べる。


(1)応募用紙検討 作成支援

eco japan cup 2006では、「応募者にしっかり環境と経済の好循環について考える機会を提供する」ことが目的である。そのため、応募用紙の項目を詳細にし、検討すべき項目の漏れを防ぐことが出来るように工夫した。


(2)応募者向けセミナーの実施

環境問題に取り組む人は、その熱意や想いは素晴らしいが、ビジネススキルの不足が否めない。そこで我々は、環境カウンセラーと合同で、応募者向けの「事業計画書の書き方」と題したセミナーを開催した。
 また、セミナー後には個別相談も行った。ここで相談を受けるプランの多くは、可能性が感じられるがアイデアレベルであるものが多く、中小企業診断士としてサポートの必要性を感じるものであった。


(3)アドバイザリーの実施

環境ビジネス・ベンチャーオープン応募者のうち、希望者に対してアドバイザリーを行った。具体的には、「この記述は何を言いたいのか分からない」といった第三者視点や、「このプランにはこういった視点が必要なのではないか」といった専門家視点でのアドバイス提供である。アドバイザリーを希望する応募者に対して、応募用紙へのアドバイスを行うことにより、高品質な応募を集めることが狙いであった。

アドバイザリーを行う上で我々が留意した点は、アドバイザリー品質の確保である。そのため、SNGS内でチームを組み、複数の診断士が同じ応募用紙にアドバイスを行う体制を整えた。また、SNGS内に事務局を設置し、アドバイザリーシートの品質をチェックすると共に、納期管理を徹底し、アドバイザリー品質を担保した。(図表3)


(4)応募支援コンサルティングの実施

上述の通り、アイデアや想いをビジネスという形にできない応募者が多い。本コンテストでは応募用紙にボリュームを持たせたことで、応募用紙を埋めるのが困難なことが予想された。そのため、SNGSでは応募支援コンサルティングメニューを準備し、応募者が応募用紙作成をサポートするコンサルティングメニューを準備した。結果として、本サービスを活用した団体が、「三井住友銀行/SMBC賞」を受賞している。

 昨年度我々が取り組んだ実感であるが、環境ビジネスには中小企業診断士が支援すべき領域が広がっているように思う。 環境問題が叫ばれている現在、想いの溢れる環境ビジネス事業者の支援こそ、中小企業診断士に求められる社会的役割なのではないだろうか。我々中小企業診断士は、多様なシーズを持つ中小企業が大きな機会を活かすことが出来るように、さまざまな形で支援していく必要がある。それこそが診断士に求められる環境への働きかけであろう。

以上、今回は環境ビジネスおよびSNGSの取り組みについて概要を見てきた。次回以降は、それぞれの詳細について述べることにする。

 

-月刊「企業診断」より一部抜粋-