診断士ネットワーク
ゴールデンサミット(SNGS)
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SNGS(診断士ネットワーク・ゴールデンサミット)
中小企業診断士

  • ■井阪 和夫
  • ■山本 竜哉
  • ■大上 裕
  • ■内野 豪
  • ■高千穂 利道

はじめに

前回ではエコ(環境)ビジネスおよび我々SNGSのeco japan cup 2006に対する取り組みの概要について述べた。
今回では、その詳細(図表1の★の部分)について述べていく。


1.応募用紙内容の検討
(1)応募用紙内容の検討

我々が、7月のキックオフに向けて最初に取り組んだのは応募用紙(事業の部)の検討・作成の支援であった。eco japan cupは優秀者を表彰するコンテストである。応募用紙は審査の判断材料となるものであり、重要な意味を持つ。

まず応募用紙の内容(量・質をどこまで充実させるか)が検討課題であった。この類のコンペでは、たくさんの応募があることが望ましい。応募用紙の充実度と応募数はトレードオフの関係にあると考えられ、ある意味コンテストの成否を左右する課題であった。最終的に、我々は内容を充実させる方向性を採った。本コンテストは実際に事業を立ち上げている事業者からの応募を想定しており、ビジネスプランは既に作成済みだろうと判断したのである。

図表1

(2)応募用紙の内容

次に応募用紙の具体的内容の検討に入った。ここではビジネスの全容から詳細に至るまでが掌握でき、且つビジネスにおいて検討すべき材料が漏れないことを大前提に考え、事業面を評価し得る応募用紙を作成した。

2.エコチャレンジ応募者向けセミナーの実施
(1)エコチャレンジとは

エコチャレンジとは、eco japan cup 2006におけるコンテストの一つであり、これから環境ビジネスを立ち上げようとしている個人・団体を対象にしている。SNGSの立ち位置は、実際にビジネスを立ち上げている事業者向けのコンテストである「環境ビジネス・ベンチャーオープン」のアドバイザリーであったが、協力要請を受け、SNGS内でメンバーの募集が行われた。

前回でも述べた通り、環境ビジネスに取り組む方の特徴として、その熱意や想いは素晴らしいものの、それを実現する経営ノウハウの不足および収益性の観点が欠落しているケースがある。そこで今回のセミナーは「事業計画書の書き方」という初歩的な内容に的を絞り、初心者が理解しにくい経営戦略等の用語は平易な言い回しとし、具体的な事例を盛り込むよう配慮した。

(2)個別相談

セミナー修了後、受講者別に個別相談を実施した。アイデアは非常に興味深いものの、ビジネスとして成り立たせるには細部の詰めが不十分と感じるものが多く存在した。これらの「想い」を「形」に変える支援を行う事は、我々中小企業診断士に課せられた責務の一つと感じた。

3.アドアバイザリーの実施
(1)アドバイザリーとは

eco japan cup 2006では新しい試みとして9月30日まではビジネスプランの再提出を認めることにした。これは応募者に各自の企画のブラッシュアップをする機会を与えるものである。その一環として応募者が8月7日までに希望すれば企画品質を高めるために応募用紙の事業性、環境性に関するアドバイスを受けることができるようになっている。我々は事業面からのアドバイスを担当した。

(2)アドバイザリーの方法

アドバイスは、SWOTの考え方等ビジネスプランの作成方法に関する視点と、ビジネスプランの内容に関する視点の両方から行なった。

4.応募支援コンサルティング
(1)受託の経緯と概要

〕償コンサルのメニューを用意
環境ビジネスのアイデアはあるが、それをうまくビジネスプランに落とし込めない応募者をサポートする目的である。

依頼者とビジネスプランの概要
依頼者は「緑のごみ銀行」というNPO(特定非営利活動法人)である。  依頼者のビジネスプランは、銀座の飲食店から廃棄される生ゴミを個別分別回収して堆肥などにリサイクルしゼロエミッションに近づけるというものであるが、特筆すべき点は回収リサイクルにかかる費用負担を、飲食店と最終消費者(飲食店の顧客)が分け合うモデルであることだ。

図表2 緑のごみ銀行ビジネスモデル図

このモデルでは、環境→生ゴミ減少、飲食店→廃 棄費用低減、消費者→環境改善参加による満足感の3者でWIN−WINーWINの関係を築くことを目指している。

(2)コンサルティングの実施

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応募用紙には財務面に関する詳細内容を明記する欄があったが、事業に関する財務計算に慣れていないため、専門家の目線でアドバイスが欲しいということが依頼者の要望であった。

改善前の状況
応募用紙の記載では、依頼者が持つ人的なつな がりから最新技術を有する産業廃棄物処理の大手 事業者、リサイクル事業者などからなる高度なリサイクルネットワークを構築できるという大きな強みを有していた。しかし、マーケティングの視点が不十分であった。環境面での考え方および事業のアイデアは大変すばらしいものの、プロダクトアウトの志向になってしまっていた。

また、加盟店を開拓する営業費用、消費者の認知を広める広告費用などは不明確であった。事業計画の前提となるべき、マーケット規模、競合の状況などもはっきりしておらず、計画の妥当性が示しきれていないものであった。

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はじめに、マーケットの規模の確定に着手した。対象エリアを銀座の中でもどの地域とするのか、ターゲットとなる飲食店、近隣駅乗降客数から算出した来店客数など、市場規模の推測を入念に行った。市場規模の確定により、明確な定量的目標を定めることができ、ビジネスモデルの大きな柱を設けることができた。

次に、マーケットインの視点で一般消費者の立場より「割高でも加盟店で食事をすること」のメリットを徹底的に考察した。プロモーション費用の捻出が難しい中で、依頼者の人脈を駆使して有名人や銀座の有名店を活用した口コミでイメージを確立することを戦略の柱とした。それに基づき、応募用紙の全ての文面を再構築し、競争戦略やマーケティングに基づき、一貫した戦略に従ったビジネスプランへと加筆修正を行っていった。

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依頼者自身の熱い想いを文中にちりばめ、そこに我々がサポートした戦略性を表現することで、説得性のあるビジネスプランが作成できた。 幸いにも審査員から高い評価を頂き、結果としてSMBC賞を受賞することができた。

(3)感想

依頼者の想いを何とか形にすることができた点、更には多数の応募者の中から受賞することができたことは、我々にとっても非常に嬉しいことであった。想いのつまったビジネスプランは、今回の我々のような支援者をも強く動かすものであるということを、改めて実感させられた。

また、環境に限らずNPOが自らの問題意識から事業を志す際には、ビジネスの観点を補完する意味で中小企業診断士がサポートできる場があることを感じた。

末尾となったが、メンバー一同、一日も早く実際の事業として実現することを心から願っている。

-月刊「企業診断」5月号より一部抜粋-