気合豆腐 埼玉屋本店

新井弘幸さん

創業は1952年。所在地は東京都葛飾区。3代目・新井弘幸さんは1963年生まれ。高校卒業後、蕎麦屋で修行。その後、埼玉屋本店を継ぐ。新商品開発に積極的に取り組み、同店を大きく成長させた。ホームページ開設は1999年。


国産大豆を使ったにがり100%の豆腐作りに賭ける日々

美味しい豆腐を作るため、新井さんは、これまで使用してきた輸入大豆ではなく、国産大豆(エンレイ)を使うことを決意する。そして、スーパーに足を運び、売れている商品をチェックしていった。その結果、「にがりを使用した絹ごし豆腐」の人気が高いことを知った。


通常、絹ごし豆腐を作る場合は、まず、大豆をすり潰して煮たあと『豆乳』と『おから』に分離する。このうち『豆乳』が豆腐作りに使われるが、豆腐にするためには、当然固めなくてはいけない。そこで『豆乳』に遅効性の凝固剤と呼ばれる硫酸カルシウムやグルコノラクトンなど を使用して凝固させるのが一般的だ。新井さんも、この手法で豆腐作りを行っていた。

「でも、にがり絹ごし豆腐は、即効性の凝固剤と呼ばれる『にがり』を使用して固めていくんです。この混ぜるタイミングが実に難しい。にがりを入れるタイミングはもちろん、どこでかき混ぜるのをストップすればいいのかが分からない。試行錯誤を繰り返す毎日でした」

成功しても、次は失敗してしまう――。そんな繰り返しのなか、失敗事例を見ては、それを反面教師にして、その要因を探り、再び豆腐作りに挑んでいった新井さん。その成果は徐々に現われ「にがり100%の絹ごし豆腐」は店先で販売されるようになった。苦境から3年の年月が経っていた。



味、香り、甘みのあるタマホマレを使った新商品作りに着手!

国産大豆(エンレイ)を使った「にがり絹豆腐」の人気は高く、売り上げは徐々に増加していった。しかし、新井さんはここで満足することはなかった。
「99年に自社サイトを立ち上げ、そこで色々な方々と交流を深めていったのですが、リンクを貼っている大豆関連のサイトのオフ会に参加したことがあったんです。そのとき『玉誉れ(タマホマレ)』という国産大豆があり、これを使えば、味、香り、甘みのある豆腐を作ることができると聞いたんです。よし、挑戦してやろうと」


とはいえ、タマホマレを使った豆腐作りは困難を極めることになる。大豆には、タンパク質の含有量が高いものから低いものまであり、一般的には高いほうが固まりやすく、豆腐作りに向いている。タマホマレは、タンパク質の含有率が低い。豆腐作りには、あまり適さない大豆なのだ。しかし――。
「試しに作ってみたら、半分くらいしか固まらなかったんです。でも、それを口にした途端、あまりに美味しいでびっくりした。この大豆で豆腐を作れば、絶対に売れると思いました」

新井さんは、まずはエンレイとタマホマレを組み合わせて豆腐作りに着手、その後、この大豆を美味しくするには、濃い豆乳を搾り出すことが重要であると感じ、濃い豆乳を絞る機械も購入するなど、一つ一つ、ゆっくりと完成形に近づけていった。
「濃い豆乳を絞るのも、豆腐に固めるのも“気合”の気持ちをもって取り組みました。2年後に、タマホマレだけを使った豆腐が完成したときには、頭の中に『気合豆腐』というブランド名がはっきり浮かびました」


小回りのきく小さな豆腐屋のメリットを今後も生かす!

現在、埼玉屋本店は、実店舗以外にネット通販事業も行っている。友人に豆腐を送り、壊れにくいパッケージを徹底研究するなど、あらゆる不安を取り除いていった。さらに、「できたての味を楽しんでほしい」という願いから、翌日配達可能な本州・四国のみの販売にした。
「今のところ、それほど大きな売り上げはありませんが、全国の方に、味わってもらえるチャンスがあるわけですから、今後も続けていくつもりです」

ホームページを立ち上げたことで、色々な人間と交流を深めていった新井さん。しょう油や納豆などの製造会社とも、ネットがきっかけとなり、取り引きがスタートしている。
例えば、納豆については、納豆関連のサイトを通じて、三重県にある納豆製造会社と知り合うことに成功し、取り引きを開始。タマホマレの大豆を新井さんがその製造会社に送り、納豆を製造してもらっている。


新井さんは豆腐に大きな可能性があると確信している。
「僕たちのような小さな豆腐屋は小回りがきくんですよ。だから、色々なことに挑戦できる。『明日は、この大豆で豆腐を作ってみよう』ということをすぐに実行できるはずなんです。でも、それを実行しない人が多すぎると、僕は思うんです。もっともっと美味しい豆腐を僕は作ってみせます。それだけ可能性のある食べ物なんですよ、豆腐は」




「気合豆腐 埼玉屋本店」の成功法則
(1)成績不振を環境のせいにはしなかった
(2)商品開発のために一切の妥協はしなかった
(3)ネットを通じた人脈作りで取引先を増やした