監修

ブランドロジスティクス有限会社
代表
小出 正三さん

1963年新潟県長岡市生まれ。
国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。
株式会社大広に入社。
新規ビジネス開拓専門のマーケッターとして活躍。その間、競合プレゼンテーションの獲得4割を誇る。その後、株式会社マッキャンエリクソン、オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン株式会社などの外資広告代理店に勤務。
2000年、当時としては国内では数少ない「ブランドマネージメント専門のコンサルティング会社」ブランドロジスティクス有限会社を設立。
日本有数のトップ企業から、新進のドットコム企業まで幅広いビジネスのブランド開発に関わる。

中小企業によるブランド経営は夢の話ではない!!


現在のブランド戦略においてもっとも重視すべきお客様ブランド。前回まではケーススタディとしてi-Podやユニクロの例などで、その成功の事例を挙げさせてもらった。しかしながら、その成功は大きな企業だからできた戦略に思われるかもしれない。

そんな中小企業の方たちに是非、紹介しておきたい会社がある。ブランド戦略が、会社の大きさで決まるものではないということがわかってもらえるのではないだろうか。





行動が徹底されてブランドになっている会社「イマン」

東京の板橋区に会社を構える生活雑貨や洋服の企画・製造・販売の会社「イマン」。社長の田中さんがフランスの蚤の市で出会った100年前のホーロー鍋やローズの絵が入ったコーヒーカップに影響を受けたオリジナル商品が並びます。現在、全国で約130店舗ほどに商品を卸して、直営店が自由が丘に一店舗、京都にパートナー店が一店舗ある。基本的に卸しがメインなのだが、この会社の雑貨は、全国にファンがおり、イマン商品を仕入れて販売したいという店が後を絶たない。その問合せに対応してもらうのにも順番待ちというブランドが「イマン」である。
現在も右肩上がりに成長を続けているが、その特筆すべきところは、徹底されたブランドイメージのこだわりである。その源にはなにがあるのか。そして、「イマン」というブランドは何を意味しているのか。「イマン」の社長である田中さんに聞いた。

ライフスタイルをブランドにする

イマンブランドとは?

「商品自体は花が入っているのがポイントですが、イマンは商品を指しているわけではないんです。日本での女性向けの商品というのは、かわいらしくはあるけれど、子供向けのものばかりで、大人のためのものがない。そんな大人の女性に向けてのライフスタイルの提供がイマンというブランドです。
例えば、自社商品にキッチンのものが多いんですが、女性にとって家事は嫌なものだからなんです。それは家事って義務だから。その嫌な義務を、少しでも楽しくする方法としてイマンの家庭雑貨を出している。だから、必ずしも“モノ”にこだわっているわけではないし、商品を売りたいわけじゃないんです。」







きっかけは日本にないものに気づいたこと

イマンの発想の源は?

「実をいうと私はいまでいうニートだったんです。なんとか大学を出ましたが、就職が怖くて海外に逃げました。でも、結局どこかで自分と向き合わないといけない。就職できなかった私は自分で会社を始めるしかないと思いました。そこでパッと浮かんだのが海外で生活していた時に体験した衣食住の中で、住産業に関して日本はとてもお粗末だというところでした。それと、日本の多くの会社で社長には男性が就いてたので、女性目線での発想がなかったのも大きいです。これなら勝算があると思いました。」





お客さんを囲い込む戦略とは!?


どうやってお客さんを取り込んだのか?

「まず考えたのは、いかに楽をしてブランド展開するか。その代わり、楽をするためにどうしたらいいかは死ぬほど考えました。そこで出た発想が私と同じような嗜好を持つ人を極力集めて、その人たちに向けて情報をFAXで1枚流したらたくさん注文がこないだろうかと考えた。その私の好む商品と同じ趣味を持つお客さんを捕まえるという発想がよかったのかもしれない。
ただし問題もあって、イマンの場合、口コミでは意外とお客さんが広がっていないんです。女性っていいモノを見つけたら自分だけのものにしたいという人が多いんです。
例えば、すごくいいエステのお店を見つけたら、自分だけ綺麗になって、人には教えないでしょう。でも、最近になって今までいなかったようなお客さんも口コミでくることが多くなってきました。なにかをしたっていう訳ではないですが、最初の頃は、イマンの商品を買うお客さんは最先端のモノを好む人か、勇気のあるお客さんでした。それは、今までの日本には無いモノを売っていたから。でも、それもようやく認知度が上がったのかなとは思います。」

ある意味ではニーズとウォンツに応えない

中小企業でブランド経営をすることについて

「私が就職活動をしていた頃、某百貨店の面接で重役面接までいったんですが、その面接官が「お客様のニーズとウォンツに応えるような応対を」と言ってたんです。でも、今の時代って違いますよね?特に中小企業でお客さんの意見ばかり取り入れてたら、収拾がつかないだけでなく、本当に自分がやりたかったことが薄まってしまって、何がやりたかったのかわからなくなってしまうと思うんです。以前はお客さんの意見を取り入れていましたが、イマンになってからは、それよりも自分のイメージを重視するようにしています。商売をしている方は皆まじめだから、お客さんの意見を全て吸い上げようとしてしまう。

でも、今の時代は物が溢れているから、お客さんも自分が何を求めているのか見失っていたりする人もいるんです。それに、今はモノのない時代から、自分好のモノを選ぶ時代に変わっている。だから、何でも屋をやっていてはダメだし、無難なものじゃ誰も見向きもしないでしょ?そこで、私は自分のやりたかったことをやるためにイマンを始めたんです。」

だからブランド経営に力を入れよう

田中さんは最後に、イマンの今後について、ブランドの“場”を提供したいと目標を語った。その“場”とはイマンでプランニングしたパーティーとかフランスなどへ旅行をすること。まるで旅行代理店のようだが、前述した大人の女性のためのライフスタイルの提供が「イマン」なので、ごく自然に受け止められる。「イマン」のように中小企業にとってのブランド経営は敷居の高いものではなく、自分の中に確信があるのなら可能なのである。そして、全てのお客さん向けに商品を発想する必要はないのである。これからの時代は中小企業にも平等にビジネスチャンスは拡がっているのである。