監修

株式会社インソース
代表
舟橋 孝之さん

1988年、株式会社三和銀行(現:株式会社三菱東京UFJ銀行)入行。システム部門にて顧客分析システム、テレマーケティングシステム開発を担当。テレフォンバンキング、iモードバンキング、コンビニバンキング等の企画開発、FC展開の店頭公開流通業の新規事業開発部長などを経て、2002年に人材教育・研修会社「株式会社インソース」を設立。現在に至る。調査→研修→定着化をトータルに行うプログラムにより、多くの官公庁および大手企業の研修実績を持つ。

会社HP http://www.insource.co.jp/


クレーム対応を成功させる「3つの手順」とは?

ケータイ化、ネット化、そしてコンビニ化。
時代の3つの潮流によって、クレームの数は倍々ゲームのように増加し、クレームの種類も多様化していることは前回で紹介した。

では、そのようなクレームに対応するには、一体どうすれば良いか。これまで数々の官公庁および企業にクレーム研修を行ってきた株式会社インソース代表の舟橋さんによれば、「最も大切なことは『基本手順』を守ることです」とのこと。そして、「クレームそのものについてはもちろんですが、お客様がクレームをおっしゃっている『気持ちの背景』を汲み取ることがまず大切なのです」と言う。

株式会社インソースがクレーム研修で用いて成果を上げている「クレーム対応3つの基本手順」がコレ。基本手順については、手順1〜3をどれだけしっかり守れるかが重要になる。

基本手順 クレーム対応のポイント
評価
×
基本手順1
相手の「 心情を理解して 」
よく聴く
不快な思いをさせたことに対してまずお詫びをする
相手の心情を理解することから始まる
迅速に対応することが基本
第一印象が重要、最初の3分が勝負
接遇など環境作りも不可欠
あいづち、クッション言葉、間の取り方が的確に使えるか
表情、視線、態度に加え服装、髪型などの身なりも大切
基本手順2
何が問題になっているか
「 事実を確認 」する
クレーム解決に必要な事実を集め記録
適切な質問で事実を固めていく
対面では、複数で応対
メモから再構成する作業が必要
基礎知識、常識も不可欠
基本手順3
問題の「 解決案 」あるいは
「 代替案 」を提示
供給者の論理を持ち込むな
解決策は5W1Hの枠組みで
解決策をお客さまとともに考えることができればベスト
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「お客さまの気持ちの背景を汲み取る」能力が求められている

まず、基本手順1について。
クレームの対応となると、私たちはどうしても「本当に壊れているのか?」「本当にこちらに非があるのか?」といった事実確認から入りたくなってしまう。たしかにそれは必要(基本手順2に該当)なのだが、まずはクレームを言っているお客さまの「心情を理解する 」ことから始めることが大事なのだ。

舟橋さんいわく「弊社の研修では、手順,箸靴董愽垈な思いをさせたことに対してまずお詫びをする』と明記しています。クレームを言ってくるお客さまは、その原因がどうであれ、不快な時間を過ごしてしまったことは間違いないのです。『そういった思いをさせてしまったことを大変申し訳なく思っております』とこちらからまず申し上げることで、お客さまの中に『自分の心情を理解してくれた、自分の怒りに共感してくれた』という気持ちが芽生え、その後の手順がスムーズになります」とのこと。

また、ここでは「お客さまの気持ちの背景を汲み取る」能力を求められている。

例えば、自社の製品について、延々とクレーム内容をしゃべり続けている年配のお客さまがいたとする。その背景には、もしかしたら「ついこの前までは一家の大黒柱として働き、尊敬もされていたのに、退職したら家族は誰も口を聞いてくれなくなった」という心の事情があるかもしれないのである。極論すれば、クレームそのものは氷山の一角でしかない。水面下にある、お客さまの気持ちを感じ取り、それに応えることが大事なのだ。

ここで言いたいのは「クレームを言われるほうに問題があるのではなく、クレームを言うお客さまに問題があるのだ」ということでは決してない。正論やきれいごとではなく、クレームを気持ちよい形で「解決」に導くためには、お客さまの背景を五感で汲み取る高い能力が求められているのである。


対面でクレーム応対は何人であたるのが適当か?

次に、基本手順2について。
お客さまの心情を理解した上で次に求められるのは「事実を確認する」ことだ。ここでは、危機管理に対する高い意識が重要となる。

舟橋さんが重要視する適切な質問とは、短く、簡潔で、趣旨が明確である質問のこと。事実を固めるためには以下のような質問事項があるそうだ。

当事者意識を高めるために「訊く」
○○についてはどうお考えですか?
重要なことの念押しのために「訊く」
○○についてはご理解いただけたでしょうか?
確認したいことを直接「訊く」
サポートサービスについてのイメージができましたでしょうか?
明確なリクエストをするときに「訊く」
この条件についてご了承いただけますでしょうか?
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舟橋さんいわく「大事なのは、とにかくメモを取って『記録に残すこと』です」とのこと。会話による応対で処理できるクレームもある一方で、訴訟となり、法廷で争わざるを得ないケースも想定しておかなければならない。その際に、メモを取るか取らないかが勝敗の大きな分かれ目となる。また、メモは単にメモのまま寝かしておくのではなく、事実をわかりやすく整理したり、クレームの内容によってはさらに踏み込んで独自調査をしたりといった再構成をしておくと良い。


また、「対面でのクレーム応対は複数であたると良いですよ」(舟橋さん)とのこと。応対役と書記役の2人で役割分担をして、事実を正確に把握し記録することで、後に水掛け論になることを防ぐことができるからだそうだ。
また、クレーム相手のいる場所へこちらから出向かなければいけない場合にも、必ず複数で行動すべき。舟橋さんによれば「相手よりも多い人数で臨めればベスト」だ。

クレーム解決を悪化させる、発してはいけないNGワードとは?

最後に、基本手順3で問題の「解決案」あるいは「代替案」を提示する。
この際に大事なこととして、舟橋さんは「組織の論理を持ち込まないことです」と主張している。以下のようなフレーズはクレーム解決を悪化させるNGワードとして覚えておきたい。

×「法律には触れていませんが」
×「前例がありませんし」
×「ただいま○○は会議中です」
×「どうかご内聞にしていただけないでしょうか」

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また、「5W1Hの枠組みで考えること」も重要だ。
以下のような流れで、「お客さまに、易しくかつ優しく解決を図ると良いでしょう。解決案はこちらから一方的に提案するのではなく、お客さまと一緒に考えることができればベストです」(舟橋さん)。
【前提】
WHY(なぜ)
【解決中の中味】
WHAT(何を)
HOW(どうする)
・原因を調査して回答する
・商品を交換する
・応対者のミスを(上司が)謝罪する
など
+
【配慮事項】
WHO(誰が)
WHEN(いつ)
WHERE(どこで)

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