石井 研二

【プロフィール】
雑誌編集、通販カタログ企画を経て、1995年からウェブプロデューサー。
最初期からアクセス解析を使い、ウェブ運営に生かすことでさまざまな企業ホームページを成功に導く。
1999年、有限会社いなかどっとコムを設立。 アクセス解析サービスを開発・発売。年間12億ページビュー以上のアクセス解析を行い、多くの企業サイトにアドバイスを行なう。
著書に「アクセスログ解析の教科書」(翔泳社)、「SEO効果を倍増させるアクセスログ解析の極意」(秀和システム)などがある。

有限会社いなかどっとコム
URL: http://www.quickvalue.net/

はじめに
アクセス解析の手法を使って、さまざまな企業サイトの構築・運営を成功に導く石井氏からアクセスログの見方、考え方について説明いたします。
リニューアルは問題点を発見してから

ホームページはどうすれば良くなるのでしょう? 訪問者が増え、資料請求や問い合わせ、会員登録などが増えて、売上に貢献する。どうすればどんなホームページに生まれ変わるのでしょうか。

今成果があがっていないからと言って、ただ変えれば良いというものではありません。実際、多くの会社でリニューアル前後のアクセスを解析してみると、確かにデザインは良くなったが、以前の問題点はそのまま引き継がれてしまっているということが多いのです。問題点を分からずに変えようとしても、正しい手をうつことはできません。

そうしたリニューアルというのは、子供の成績が上がらないからといって、「勉強しなさい」と言ってみたり、何も言わないようにしてみたり、揺れ動く親の姿に少し似ています。なぜ成績が上がらないのか、答を見つけてから対策を考えることが大切です。

見るべき3つのポイントだけ覚えたい

まずは現状を分析することから始めるのが結局近道です。多くの経営者が「いや、今のサイトがひどいのは良く分かっているから、まず改善してから分析しないと意味がないのでは」と言われます。

が、「ひどい」ことが分かっていても、「どうひどいのか」「なぜひどいのか」が分かっているとは限りません。逆に今のサイトの良いところも分からずにリニューアルすると、せっかくの良い部分を消してしまう恐れもあります。

今のアクセスの分析では、見るべきポイントは3つ。数字に弱くてもコンピュータに弱くても、必ず分かる分析ポイントを整理すると、

1)現状のサイトで顧客を帰らせているのはどこか?
2)成果に近いのはどこか?
3)今、来てほしいのに来ていないのはどんな「顧客」か?

の3つに絞り込めます。(1)が問題点、(2)が良い点、(3)がより良くするために必要なポイントです。

これさえ分かれば、分析は簡単でローコスト。検索サービス大手のグーグルが提供する無料の分析サービスなどを使っても、正しい指針を得ることができます。

わずかの作業でアクセス5倍?

ある私立高校のサイトでは、資料請求のページに1日4人しか訪れていませんでした。大半の人は資料請求に行かずに帰ってしまっているのです。ページの上の方に置かれていた資料請求のボタンがクリックされていなかったので、ページの下の方にも資料請求のボタンを置きました。するとその作業をした翌日から毎日20人の人が資料請求のページに移動するようになりました。実に5倍!ボタン1つの作業です。

ホームページは難しい技術的なものに見えますが、実は普通の人が読んでボタンをクリックする単純なもの。どこに問題があるのかが分かれば、意外に簡単な作業で良くすることができます。

ある大手企業のサイトでは、製品発売時のニュースリリースのページが1,200人もの訪問者の入口となっていました。非常に良いキーワードで検索した人が訪れていたのですが、実にその95%、1,140人もの人がこのページしか見ないで帰っていました。肝心の製品紹介ページを見てくれていません。

この場合も対策はシンプル。問題のニュースリリースのページに、その製品の紹介ページへのリンクをつけるだけです。もともとその製品について知識を得たいと思って検索している人が多かったわけですから、リンクさえ加えれば多くの人がクリックしてくれます。リンクを1つ加えるだけの作業で、1,140人に商品紹介を見てもらえるのです。

いくら訪問者が多くてもページビュー数が増えていても、「見てもらいたいページ」が伸びていなければ意味がない、ということになります。ホームページのアクセスは量だけでなく、質が大切だということです。多くのサイトでは、全体のページビュー数だけでサイトを評価していますが、それでは質が分からず、どこに問題があるのか見えてきません。

単純な割り算でアクセスの「質」が見えてくる

アクセスの質をチェックする方法を、具体的に見ていきましょう。
まず、全体の訪問者数とページビュー数を1ヶ月単位で記録します。月に2万人が来て5万ページビュー見られているなら、1人平均2.5ページしか見ていないことになります。 1人2.5ページしか見ていないとしたら、資料請求や商品販売がうまくいっているとは思えません。資料請求は、最短距離でも「商品」→「請求フォーム」→「確認画面」→「完了画面(資料請求ありがとうございました)」の4ページ見てもらう必要があるからです。

仮に5万ページビューが7万ページビューに増えたら、効果は上がるでしょうか? 訪問者数が2万人から3万人に増えていたとしたら、1人あたりの閲覧数は、平均2.5ページから2.3ページに減ってしまったことになります。

5万ページビュー ÷ 2万人 = 2.5ページビュー/1人
7万ページビュー ÷ 3万人 = 2.3ページビュー/1人

このシンプルな割り算だけで、アクセスの質が少し見えてきます。
実際、訪問者数が増え、ページビューも増えているが、アクセスの質が下がっている、というサイトは今非常に多いのです。広告で、いわば無理に人を連れてきているサイトが多いからです。9割以上の人が1ページで帰っている広告は珍しくありません。広告がクリックされるたびにコストがかかっているので、もったいないことです。まずこの数字を確認してください。

あと1ページ見てもらうことができれば、2万人が3.5ページ見るわけですから、訪問者数を増やさずに7万ページビューに増やせるはずです。

今、半数の人が1ページしか見ていない!

多くのサイトで平均ページビュー数が少ないのは、1ページで帰ってしまう人が多いからです。1ページで帰ってしまうことを「直帰」と呼びますが、今多くのサイトで平均49.9%もの訪問者が直帰しています。半分が直帰しているのでは効果が出るはずはありませんね。その原因として、今のホームページはトップページから人が来ない、ということがあげられます。かつては7割〜8割の訪問者がトップページを入口にサイトを訪れていましたが、今やわずか30%前後。検索が盛んになっているためです。いったい、残り70%の人はどのページからサイトに入ってくるのでしょう?

トップページは力を入れて作成していますから、すぐ帰る人は少ないのですが、トップ以外のページは入口になると想定せずに作成しているために、検索や広告などから入口になるとすぐに帰られてしまうことが多いのです。

例えば商品の詳しい情報を掲載しているPDFファイルが、検索から2,000人の入口になっていた、というサイトもあります。PDFファイルにはリンクがないため、95%の人が帰ってしまいます。

古いニュースリリースが入口になっている場合はもっと困ります。あるパソコンソフトメーカーのサイトでは、今売っているソフトはバージョン6なのに、バージョン4の時のリリースが入口になっていました。古い情報だけ見て帰ってしまうのですから、「あのソフトは機能は低いし値段は高い」と思われたままになってしいまいかねません。そのニュースリリースのページには、急いで最新商品情報へのリンクを加えなければなりません。

そもそも「お客様」が訪れていない?

ただリンクを直せば良くなる、というだけではありません。そもそも「顧客」になるような人があまり訪れていないサイトも多いのです。自社の営業マンが顧客提案のために盛んに利用していて、社員のアクセスを除いたらアクセスが半分になったサイトもあります。企業向けの食品を扱う商社なのに、レシピ集が人気で主婦ばかり集まるサイトもありました。

こうした場合には、サイト内を調整しても成果はあがりません。顧客になる可能性のある人を狙った集客を考えていきましょう。現状分析をすれば次に打つ手が適切なものとなり、コストパフォーマンスの高い対策が可能となります。