松本 憲昌

【プロフィール】
1961年生まれ
(株)51マネージメント 代表取締役

広島県呉市仁方町出身。祖父は池田勇人元首相の地域後援の懐刀に任命された人望ある人物。
その孫にあたる憲昌氏は、幼少期に代々継承されてきた鑢メーカーの事業倒産を経験。後の仕事観に多大な影響を受けた。
五年間のサラリーマン生活を経て27才で起業。
財務・経営指南(人事)のプロとして21年間で、1500社以上の経営指南、100社を超える事業継承、80社の株式公開に関わってきた。財務の視点を優先し「減収増益」こそ企業が目指す重要な指標である。。を唱えるとともに、常に「最高と最悪」をイメージすることを経営者に伝えてきた。
51マネージメントという社名は「49:51」という意味合いから名付けた。「2」の差で明暗を分けるということを追求してきた。つまり「2」の差でオンリーワンを築き上げることができる!という概念だ。最後に、財務のプロフェッショナルに求められることは、 経営者が自信を持てないお金に関する実験済みノウハウを合理性を持って伝え続けることだと松本は唱える。

51マネジメント
URL:http://www.51management.jp/index.php

はじめに

1961年生まれ
51マネージメント
代表取締役 松本憲昌

私は今まで21年間、2000人の経営者・幹部に対して経営相談を行ってきましたました。その多くは、


・「既に決めていることを確認したい」
・「色々試したが打つ手がない」または「最適な方法を知りたい」
・「自分の代わりに代弁して欲しい」
・「自分に代わって悪者になって欲しい」
・「起きている課題の本質を知りたい」 
・「誉めて欲しい」逆に「叱って欲しい」
・「資金調達をお願いしたい」
・「優良なお客さまを紹介して欲しい」

以上が、主な相談内容でした。


 相談内容一つ一つに、その経営者の「性格」「仕事観」「人生観」を垣間見ることができました。これまで、多くの経営マニュアルを経営者に唱えてきましたが、その多くは2000人の経営のノウハウを加工したものです。ここでいう「加工」とは、知り得たノウハウを別の業界において「カスタマイズ=応用」するという意味です。私は、常々、同じ業界の経営者と「会う」よりも、まったく違う業界、業態の経営者と 「逢う」ことを勧めてきました。


 今回、「知られざる経営相談の受け方」と題して、実際にあった相談のやりとりを公表します。これは、経営者にとって明確な「相談相手」がいないこと。あるいは問題を増やしたくないという観念から相談しない・・といった概念があるからです。これは「パンツの中身を見せる」とか「丸裸になった」という概 念と一致しています。


 最後に忘れてはいけない着眼点の一つとして「日本人独特の特性(島国根性)」を考えておくことが大切です。これまで、欧米のマネージメントをベースに、学者やコンサルタントが存在してきましたが、現在、その見本としてきた米国は経済大不況で苦しんでいます。アングロサクソン民族は「狩猟民族」、東洋人は「農耕民族」と言われています。狩猟民族は「ナイフとフォーク」日本人は「箸」といった喩え話しは有名です。つまり、切ったり貼ったりすることで問題解決するパターンと、丁寧に順序を考え一つ一つ拾っていくパターンがあるのだ・・という喩えだと解釈しています。

経営相談の実例 「資金繰りが厳しい」

 会社が破たんする時、多くは資金が枯渇し潰れます。一昔前は、100年継続できる会社は0.2%、つまり1000社中、2社のみと言われてきました。しかし現在は違います。現在では10年継続できる会社は0.7%と言われています。会社は短命、人生は長寿命。このギャップが「不安」を助長しています。

松本:「山田社長、今日はどのような相談でしょうか?」
「ご相談をお聞きする前に、まず私が作成したアンケートに答えてください。この回答は今回の課題が解決した時に、照らし合わせて見ましょう。そうすれば興味深いことが 分かります。そして、今後の山田社長の経営の進め方に変化があると思います。勿論これは「プラス」の変化を意味します。(笑顔)」

山田社長:(仮名、E社代表)「当社は、社歴25年、今までにないほど経済的に苦境です。社員にも言えません。ただ、目標管理どおり売上も達成できていませんので、社員も薄々気づいていることだと思っています。このままだと3ヶ月後には資金ショートしてしまいます」

松本:「今まで本当にここまで、頑張ってこられました。山田社長は素晴らしい経営者です。家族も社員も心から感謝しています。その感謝を口にしていないだけです」

松本:「資金繰りが厳しい・・ということについて、深い原因があるようです。代表的な原因を説明しておきます。原因は顕在的な原因と、潜在的な原因に分かれます。

顕在的原因と潜在的原因

(顕在的原因とは)
01販売不振
02営業力が弱い
03銀行で資金調達できない

(潜在的原因とは)
04総利益が低い=ビジネスモデルの欠陥(変革)
05金融債務がキャッシュフロー上、負担=債務超過または恐れあり
06財務、経理担当スキル不足=知識不足、折衝力不足、実力不足、 アイデア不足
07自己資金がない=しかし、夢が大きく、経営基盤を創れない
08シナジースポンサーなし=自力型経営で、援助し合える経営者仲間を 創っていない
09株主が多く、経営方針を固められない=売上よりも金集めに集中
10組織崩壊のため、コスト高、粗利益下落=社員との信頼関係崩壊

※シナジーとは「互いの強みを発揮し合い、収益を向上しあえる関係」をいいます
P/Lに注力しすぎてしまう

山田社長:「一つ一つ納得できる話しです。私たち創業経営者は、松本さんが言われて
いる顕在的原因・・P/L(損益計算書)に注力しすぎていて、B/S(貸借対照表)に基づいた経営を行っていないことを指摘されているのですね」


松本:「まったくそのとおりです。冷静になれば、わかりますよね。しかし、冷静さを欠く要因があるのです。それは「増収増益」という言語なのです。山田社長は、いかがですか?」

山田社長:「当社はメーカーと商社機能を備えた業態で、競合他社と常に比較されてきたのです。増収増益 は必須要件でした。また、従業員へボーナスを払うためにも。従業員への厚い待遇は、人材獲得にも大きく影響がありますので」

松本:「山田社長は本当に偉い人です。業界を牽引し、社員への熱いエールを贈り続ける。 しかし、一番大事なことを忘れています。それは、二頭を追うものは一頭を得ずということです」

松本:「業界を牽引することや社員に厚い待遇で接することと、増収増益を目標とし続ける ことは別な課題です。なぜか?わかりますか?」

山田社長:「なるほど、別な方法があるということですね。つまり、あえてリスクの大きい方法をとることではない・・。ということですね」

売上カーブとコストカーブ

松本:「次の絵を確認ください。売上(増収)カーブとコストカーブを並行にすることはかなり困難です。むしろ、減益となってしまい、破たんリスクは高まるのです。(1図2図)」

1図 2図

山田社長:「当社は2図を確かに目指し、2図の結果となってしまいました。現在は、決算書のとおりで、銀行からの貸し渋りも起きてしまいました」

松本:「山田社長は、銀行に対してどのような感想をお持ちでしょうか?」

山田社長:「創業時より、多くの担当者が変わりましたが、親身になってくれた 担当者もいましたし、そうでない方もいました。ただ、今思えば銀行の特徴がなくなった感があります。金融庁主導となってからは、当社には冷たくなったと思 います」

松本:「先ほど、資金繰りが厳しい・・の潜在的原因の05、06、07に注目ください。苦しい会社の多くの 場合、財務専門知識と経験不足から最適なアイデアがなく、バランスシートがかなり傷んでいます。金融機関は、社長の経営に対する熱心さも大事ですが、それよりも、バランスシートに 答えがある のです。山田社長は、なぜ気付かなかったのでしょうか?」

山田社長:「実は5年前から第三者による増資を募り、資金繰りという課題を乗り切った経緯があります。 その時得た資金を、社員の増員に遣ってしまいました。優秀な社員がいれば、増収増益にな ると思ったからです」

松本:「よくわかります。この判断は、誰としましたか?」

山田社長:「5人の全役員です。あと税理士にもしました」

松本:「山田社長、最適な相談者だったでしょうか?今思えば・・」

山田社長:「浅い知識と経験の有無を確認することもなく、判断してしまいました」

松本:「話しは変わりますが、粗利益率がかなり下がっていますが、ビジネスモデルを変革することはチャレンジされましたか?粗利益(売上総利益)は、利益の源泉です。また、粗利益とは、商品の魅力 度合いを意味します」

山田社長:「そういう意味では、チャレンジしていませんが、消耗品業界に目を向け業務提携しました。その為に若手社員を起用し、コツコツとクライアントを増客しております」

松本:「会社全体の損益分岐点、部門別損益分岐点、プロジェクト別損益分岐点をテーブル化しています か?」もし、そうでなければ、益々資金繰りは厳しくなります。つまり、鋭いひらめきで新たな事業展開をしたものの、返って苦しくなってしまうケースです」

損益分岐点

損益分岐点(BEP=break evenpoint)とは

売上高と掛かる費用の額がちょうど、等しくなる売上高を指します。損益分岐点売上高ともいいます。BEPを求める公式は  固定費÷[1−(変動費÷売上高)]。

次に大事な指標は、損益分岐点比率です。損益分岐点売上高(対)現売上高を見ます。売上高が何%下がった場合、赤字転落するかを見る「直観的指標」です。 理想は80%、90%を若干超える企業が大半です。

松本:「経営者の多くは、直観的ですから、直観的指標が大事です。ですから直観的に社員へ近づくことが自然なのです。では、具体的に成功させている会社を紹介しましょう。」

松本:「この会社は、うどんとおはぎのお店を150店舗経営しておられます。この会社には優秀な税理士が 顧問でおられまして、先ほどの損益分岐点について、各店長、副店長に教育をされています。しかし、机上では理解できたと思われますが、中々成果に繋がらないとの相談が、税理士から私の方へ 連絡がありました。私は早速、6人の店長、12人のパート社員へ、損益分岐点について尋ねてみました。すると、小林さんという若手の店長から一つの意見が出ました」

小林店長:「松本さん、私達は、うどんと和菓子が好きで・・この街で、この仕事を選んでいます。毎日来てくれる上得意さまが、数多くおられ、嬉しく思っています。教育が大事だと解っていますが、必要以上に数字を突き詰められると、違和感があり、パート社員との関係が最近ギクシャクしているのです」

松本:「小林さん、何かいい方法はありませんか?」


小林店長:「正しいか、間違いかわかりませんが、昨年5月は損益分岐点達成日が5月23日でした。今月、みんなで頑張って5月20日を切りませんか?・・もし切れたら、大入り袋をだしますよ・・。というのは どうでしょうか?」

松本:「この手法は、うまくいきました。今では、パートさんがいろんなアイデアをもって、経営参画しているのです。山田社長、社員の経営の参画とは、こういうことです」

山田社長:「松本さん、私は会社を潰したくありません。どうか効果ある財務解決の手法の教示と、社員にどうやって魂を入れるかを手伝ってくださいますか?」

松本:「それでは約束が5つあります」

「一つ、秘密を厳守すること=しばらくは、他人に相談をしない」
「一つ、企業価値を上げるために、努力を惜しまない」
「一つ、これ以上借金をしないこと」
「一つ、家庭を今よりもさらに大事にすること」
「一つ、ついてきてくれた社員、取引先に感謝し行動すること」


実際のソリューション

この後、2ヶ月をかけて、次のソリューションを提供しました。

=シナジースポンサーが見つかった場合=
※1.シナジースポンサーを松本が紹介
※2.シナジースポンサーの強み、E社の強みを考慮した事業戦略をベースに計画を立案
※3.A事業の価値=営業利益 + 役員報酬 + 減価償却 ±α=●●●万円
※4.A事業をY社に事業譲渡し、B事業もって会社破たんを.回避する

3図

=シナジースポンサーが見つからなかったケース=

4図

二千人の経営者とともに歩んできた21年間の汗を書き下ろす

ポイント
次の大不況までにやるべきこと
ポイント
知られざる経営相談の受け方

相談\簑个膨戮譴覆げ饉劼箸
相談∋餠盞りが悪化する深い原因
相談シナジーを考える経営
相談ぅ罐法Ε船磧璽狒篭伴圈高原氏が語る「大事は理をもって処す。小事は情をもって処す」
相談チ反イ諒壊
相談νソ┐茲蠅睛Φい里△訖雄爐判笋蟆颪
相談Я甍霤賃膤慳祥清擬との出会い〜人の性格は変わらない。しかし態度・感性は変革できる
相談┸静鎚杆郢里箸僚于颪ぁ曽さなM&Aでピンチを切り抜ける
相談経営者、経営幹部に必要なこと。それは「夢の向こうに夢がある」
相談後継者のための経営相談
相談全天候型経営を目指す
相談成功者の悩みを知るべし

最後に

 一部の日本人は、劇的ストーリーが大好きであり、一部の日本人はまったく好みません。これは「日本 人独特の特性」の一つと解釈した方が分かりやすいのでは。特に「水を差す」「水に流す」といった日本語 がありますが「白黒」つけずに「灰色のまま忘れようではないか・・」といった慣習が、仕事、家庭、地 域に染まっています。これらは「同じ失敗を繰り返す」「短所を引き継ぐ」「わかっているけど止められな い」といったジレンマに陥ることに繋がっているのです。

 最後に、私の座右の銘を記しておきます。

一つ 「逆もまた真なり」

一つ「長い苦悩というトンネルにも必ず出口はある。しかし幸せというトンネルは以外と短い」 

一つ「捨てる神あり、拾う神あり」