住田俊二
(すみだ しゅんじ)

【職業】
経営コンサルタント
合同会社夢をカナエル代表社員・CEO
中小企業診断士・社会保険労務士

合同会社夢をカナエル
http://yume.main.jp/

【略歴】
1951年生まれ。大手化学メーカーに約29年間勤務し、企業法務、人事制度の新設と運営などを 担当した後、2004年4月、中小企業診断士として独立開業。
2005年9月、社会保険労務士登録。2006年5月、新会社法に基づく「合同会社夢をカナエル」を 仲間と共に設立し、代表社員・CEOに就任。
企業法務と人事労務に強いコンサルタントとして、社員研修や執筆、人事制度の構築などで活躍中。
2006年4月より東京都文京区経営相談員(水曜日担当)

【主な執筆実績】
・2005/5「企業診断ニュース」人材マネジメント特集
・2006/1「企業診断」新会社法特集
・2006/7「企業診断」日本版LLC夢をカナエルの設立
・2006/11「企業診断ニュース」団塊世代の引退が人事システムに与えるインパクト
・2007/1〜3「企業診断ニュース」再チャレンジ可能な仕組みの構築

はじめに

前編では交渉力の基本について説明させていただきましたが、 後編では実際の交渉の方法について説明致します。

3.交渉を計画する

交渉がうまくいくためには、アサーティブな態度だけでは足りません。その交渉が重要なものであればあるほど、計画を綿密に立てることが必要になります。計画を立てるときに考える項目には、次のようなものがあります。

(1)交渉の目的と到着点を考える

具体的には、

  • その交渉は何のためにするのか
  • その交渉のゴールとはどんな状態をいうのか
  • 交渉にどのくらい時間をかけられるか
  • 社内のサポートはどの程度得られるか

などを事前に考えておくことです。

(2)交渉相手が何を望んでいるかを考える

物の売り買いの交渉であれば、その物の「価格」「数量」「納期」「納品方法」「支払サイト」などがあるでしょう。

(3)自社(自分)が何を譲歩できるかを確認する

物の売り買いの交渉であれば、その物の「価格」「数量」「納期」「納品方法」「支払サイト」などに加えて、「相手との別の取引の可能性」なども譲歩の材料として考えられます。

(4)交渉がまとまらなかった場合を考えておく

  • 次善の策はあるか
    例えば、「(売り手の立場で)他の顧客にも売れる」「(買い手の立場で)少し高いかもしれないが他社から購入できる」などが考えられます。
  • 時間的な余裕はあるか
    当然ですが、時間の制約があると、交渉をより良いかたちでまとめる余裕がなくなります。
  • 交渉相手以外の第三者との関係はどうなるか 例えば、商品の仕入れ交渉の場合、その商品の顧客への影響(納期が遅れないか、価格に転嫁できるか、など)を考えます。

このような点を事前に考えておくことで、交渉に臨む際の自信につながり、またアサーティブな交渉が可能になります。

4.交渉を実行する
(1)交渉を始める

計画ができたら、いよいよ交渉を始めます。

その際の一般的な注意事項は、次のようなことが挙げられます。

  • 交渉中はなるべくポーカーフェイスで、感情を表に出さない。(相手と協力するといっても、必要以上の情報は与えない方が正解です)
  • 交渉中はいつもポジティブに。(ダメかと思っても、必ずまとめるつもりで)
  • 交渉は焦った方が負ける。
  • 交渉のゴールは「相手がどうするかという行動形」で語ると、理解されやすい。

(2)交渉を次の段階に進める

  1. 早い段階で一歩先に進むとあとが楽になります。
    そのためには次のような点が重要です。
    • 相手のメリットを提示する。 例えばプリンターを売る際に「このプリンターは高性能で、1分間に100枚も印刷できます」というより、 「このプリンターを使えば、お客様の印刷コストが月に2万円削減できます」の方が、相手に聴いてもらえます。
    • 主語は「私」「当社」を使う。
    • あいまいな表現は避ける。
    • あくまで事実ベースで伝える。
  2. 相手の話をよく聴き、Win-Winになるポイントを探します。
    • 「雑談」も話の糸口として有効です。
    • 質問も、相手が答えやすいように「YesかNoで答える質問」と「自由に答えられるオープンな質問」を場面により使い分けましょう。
    • 相手の発言内容からキーワードを効果的に拾い、自分の発言に採り入れてみましょう。
    • “Give & Take”(何かを相手に与えれば何かを相手から取れる)という考え方よりも”Give & Given”(何かを相手に与えれば何かを相手からすすんで与えてもらえる)という考え方が有効です。
  3. 交渉をスムーズに進める工夫としては、次のようなものがあります。
    • 口頭だけの説明よりも、印刷した資料を渡すと、相手の信頼感が高まります。
    • 1回の交渉を終えるごとに内容を書面にし、社内で確認すると同時に相手にも送っておくと、誤解を防げるとともに、以後の交渉の主導権を握れます。
    • 沈黙や交渉中断を恐れない。→「休憩しましょう」や「では次回また」など、交渉を決裂させない知恵を絞りましょう。

(3)交渉をまとめる

交渉をまとめるにあたっては、次のような点に注意しましょう。

  • 「交渉がまとまるパターン」と「まとまらないが、次につながるパターン」の2通りを準備しておく。
  • 相手から前向きな回答をもらったら、必ず「ありがとう」を伝える。
  • 「譲歩」は、必ず相手の譲歩と交換し、一方的な譲歩はしない。
  • 価格に関する譲歩はぎりぎりまで取っておく。

(4)反論されたとき、するとき

交渉に拒否や反論はつきものですが、「No !」にも、言われ方、言い方があります。

  • 反論は早めに引き出し、ドタン場でのどんでん返しを避けましょう。
  • 反論されたらまず「ご意見有難うございます」と言ってみましょう。こちらの気持ちに余裕ができます。
  • 反論するときは、いわゆるサンドイッチ話法で、否定的な表現は真ん中にはさんで言うと、印象がやわらぎます。
  • 反論する際は「条件」「代替案」「次の取引の機会」などを示すと、こちらの誠意が伝わりやすくなります。
5.相手の戦術を見破る

以上のようにして、相手と協力して交渉をまとめていくのですが、そうはいっても、相手も交渉を自分に有利にしようと考えて、いろいろな戦術を使ってくる場合があります。
それを見破り、適切な対応をすることも、ときには必要です。
ここでは、2つだけ例を挙げます。

(1)最後通知によるプレッシャー戦術

「これ以上値段が下げられないのなら、交渉は終わりですね」などという「最後通知」を言って、その線で交渉をまとめようとプレッシャーをかけてくる戦術です。 このような相手には、どうしても押されてこちらが折れてしまいがちですが、

  • 動揺せずに、とりあえずは最後通知を無視して交渉を進め、本物かどうか確認するのが先決です。
  • 最後通知が本物だとわかったら、相手が譲れないという項目(上の例では「価格」)以外に交渉の項目を広げてみましょう。他の項目(例えばオマケや保守サービスなど)と組み合わせてみることで、意外な妥協点が見つかる可能性があります。

(2)「悪人+善人」のセットによる演技

相手が2人組で、まず一人(悪人)が高飛車な態度でこちらを威圧し、こちらが驚いていると、もう一人(善人)が「まあまあ、そんなにひどいことを言わなくても・・・」などとなだめて、悪人よりはマシと思われる提案をし、その提案内容で交渉をまとめてしまおうというものです。

  • 悪人の威圧的な言動が基準になって、善人の提案が実物以上によく見えてしまうのが相手の狙いですから、先方がこういう言い方をしたら、まず落ち着いて、善人の提案を悪人の言動と切り離して評価することが第一です。
  • この変形パターンとして、相手が一人(善人)だけで、その場にいない「物わかりの悪い上司」や「会社の規則」を悪人にする場合もありますので、注意しましょう。

後編では、実際の交渉の方法について説明致しました。お役にたちましたでしょうか。
皆様の今日からの交渉が、実り多いものになりますよう、願っています。