監修

株式会社 企業ドクター
代表   

岩井 義照さん

1930年生まれ。日本大学法学部卒。1952年商工中金入社、東京支店参与として東京都内商工業同組合の経営指導などを担当したのち1985年退職。その後(株)第一経理 経営相談室室長を経て1990年独立し、(有)祝経営研究所を代表取締役として現在に至る。企業を救う医者として年間400件を超える相談を担当。金融機関対策、倒産救済対策の実績は日本一である。




景気回復は幻想でしかない!!

「景気が回復したように最近は伝えられているが、中小企業に関しては全くそんなことはない。中小企業は個人会社まで含めると約600万社あります。そのうち約7割の会社は赤字経営なのが現状です」と、岩井さんは力説する。

今回ご登場いただく岩井さんは中小企業を救う企業ドクターである。日本の中小企業にもっとも親しく接している人物だ。バブル期を越える好景気と世間では伝え聞かされる現在の好景気。しかし、中小企業の実情は違うようだ。それでは、なぜ7割もの会社が赤字経営でありながら、それが公にならないのだろうか?

「その理由は、金融庁から2期連続赤字なら融資をするな。3期連続赤字なら不良債権として処理しろと金融機関に指導がきているからです。

中小企業はギリギリの経常資金だけ金融機関から借りていて、それは人間でいえば血液なんです。血液を抜かれたら死んでしまいますよね。中小企業は、それを避けるために5割ほどが逆粉飾決算をして乗り切っているんです。衣食住の大部分を支えているのは中小零細企業です。この人達が崩れだしたら本当に危険で、いまギリギリのところで彼らはがんばっている状態なんです」

中小企業の7割が赤字であり、借金を背負っている現実。いきなり厳しい話ではあるが、これが現在の好景気の実態である。それではなぜ中小企業は借金を抱えてしまうのだろうか?

中小企業の大多数を占める借金理由

「日本の中小企業が借金体質になる理由の根底には日本の方針がある」と岩井さんは語る。

中小企業の借金理由で一番わかりやすいのは決算書の例だろう。決算書は上下4つに分かれているが、会計学上の大原則で流動負債と流動資産はイコールでなくてはいけない。それが最低のバランスだ。同じように固定資産と固定負債も一緒でなくてはならない。ところが、日本の中小企業の資本金は株式会社でもほとんどが1,000万円である。この資金では工場も店舗も建たない、新しい設備も買えない。
そのため、日本では、著しく足りない資本金を金融機関が貸す仕組みになっている。銀行はそれを認めないが、これが事実なのである。

「つらいのは当たり前なんですよ。少なくとも固定資産を自己資本金で賄えているならば、多くの会社で流動資産と流動負債が大体一緒ですから多額な借金は必要ないでしょう。

ですが日本は資本金を銀行借入でおこなっているのでつらいんです。欧米でも資本金を貸しますが、その場合は投資銀行からの投資になります。ですから利益が無ければ配当は払わなくいい。もちろん出資ですから返す必要はない。日本の場合は貸付金ですから、どんなに利益が無くても利息は払わなくてはいけない。利息だけでなく元金も返せというのが不況の続く現在の常識になっています。

しかし、この元金は資本金であり工場、機械になり稼動をして初めて利益を生んでいるんですから、途中で返済するのは不可能なんです」と、岩井さんは断言した。中小企業の借金体質は構造上から不可避なのである。それでは、中小企業はどうこれから生き抜いていくべきなのだろうか。


借金返済に苦しむ企業を救う理論

岩井さんが十数年の研究と実践により到達したのが赤字に悩む中小企業を救う「岩井理論」である。それは原則として3つになる。

岩井理論3つの原則



3つとも日本の今までの常識では理解されなかったもので、経営者にとって実行するのに勇気のいることだろう。しかし、その本質を知り理解することで多重債権に苦しむ企業の多くが救われてきた実績がある。それでは、順を追って説明していこう。

〕息を払っていれば正常債権

岩井さんを訪れる中小企業経営者のほとんどが「借入金の利息分は払えるが、元金の返済がつらい!」というそうだ。逆にいうと利息分まで払えないほど追い込まれているケースは少ないのである。

元金を支払えないから、「元金棚上げ交渉」を経営者が持ちかけても、銀行側は決められた返済額の返済を迫り「不良債権扱いにする」とか「担保物権を競売にかける」と脅し文句をいってくるだろう。

しかし、銀行にとって元金棚上げをすることはたやすいことなのである。

元利金を毎月返済しない債務者は不良債権という“表向きの定義”とは別に中小金融機関には一貫した基準がある。

「事業・商売を続けていて、粗利益があって、利息を払っている債権は正常債権であり正常企業である」これは不文律ではあるが、銀行員たちの本音の定義である。

利息を払っていれば正常債権という一番の理由は前項で述べた中小企業に資本金を貸していることにある。そのため企業が存続している間の返済は難しいのが実情である。元金は企業が終焉するときに清算する。これが日本流の中小企業と金融機関のあり方である。

担保を売れば無借金になれる

売上が落ち込み、資金繰りが行き詰まり八方ふさがりに陥った企業を救うにはどうしたらいいのだろうか。そこで岩井さんが行きついたのが欧米では当たり前になっているノンリコースである。ノンリコースとは「返済できないときは担保物権を銀行に渡せば貸し借りなしで無借金になる」という制度であり、自由主義経済ではあらゆるモノの値段が上下動するのは当たり前という考え方である。質屋を例にしてみよう。


・質屋が時計を質草(=担保)にとり1万円を貸す
↓客が金を返さなかった
・担保の時計を流し(=売却)て、その客とは貸し借りなしになる。

例えその時計が5,000円まで値を下げようが客に不足額を請求することはできない。リターンを求める以上リスクは当然であり、それが自由主義経済の原則だからである。

これと同じことが銀行の担保物権にも当てはまる。銀行が貸付先のビルを3億円と評価して、そのビルを担保に3億円貸したとする。もし、そのビルの価格が1億円まで下がっても本来、それは銀行の「自己責任」になる。債務者が担保を銀行に渡すか売買代金の1億円を払えば貸し借りなしなのが当たり前なのである。

銀行は1億円の入金があれば残金2億円は必ず年度末(3月)に償却し貸付金はゼロとする。これは会計上の原則であり、金融庁の指導である。これが実態で、日本も事実上ノンリコースである。

心配ない担保を売って借金が無くなったら、店舗なり工場を借りて仕事を続ければよい。大事な担保であったなら、その物件を買い戻せばいいのである



8朕擁歉擇蝋圓ない・話さない・払わない

「個人保証などという悪質な行為があるのは先進国の中で日本だけです」と岩井さんは言う。
もし、あなたが保証人として名を連ねているときにはどうしたらいいか。それは銀行から呼び出しがかかっても「行かない・話さない・払わない」ことを徹底することである。銀行に行くと何人もの銀行員による厳しい追及に遭い、逃げ場を失うことになるので行ってはいけない。行かない場合、電話がかかってくるが話す答えは一つ「生活が苦しくて払えない」の一点張りである。
それでも諦めないときは「貸金等規制に関する法律」の「取立てにあたっては私生活並びに業務の平穏を犯すことはできない」と明記しており、それをタテにする。最終的には取れないものは諦める。個人保証追求を恐れてはいけない。


借金ゼロを目指すなら

最後に岩井さんのメッセージをお伝えしておこう。
「私の理論は誤解されがちですが踏み倒しではありません。市場経済の原則にのっとった正当な方法なのです。多くの正常企業の経営者がいっていますが、当面の収支は回復したが過去の膨大な借金は返しようが無いと。しかし、私の理論を応用すれば不良債権に苦しんでいる企業も、正常企業でも無借金になれます」

今回スペースの都合上、実際に金融機関と話し合う上でのやり方については割愛している。借金に苦しみ悩まれながら経営を続けている経営者の方は、岩井さんの会社を訪ねるか、著作本を読んで見て欲しい。

株式会社 企業ドクター
TEL03-3980-3861
FAX03-3980-6945

これからの中小企業の経営は金融機関に頼りきりではいけない。関連企業同士の横のつながりを密接にするなど様々な対策も講じておくべきだろう。