監修

株式会社インソース
代表
舟橋 孝之さん

1988年、株式会社三和銀行(現:株式会社三菱東京UFJ銀行)入行。システム部門にて顧客分析システム、テレマーケティングシステム開発を担当。テレフォンバンキング、iモードバンキング、コンビニバンキング等の企画開発、FC展開の店頭公開流通業の新規事業開発部長などを経て、2002年に人材教育・研修会社「株式会社インソース」を設立。現在に至る。調査→研修→定着化をトータルに行うプログラムにより、多くの官公庁および大手企業の研修実績を持つ。

会社HP http://www.insource.co.jp/


大クレーム時代を到来させた3つの“罪”

「クレームの絶対数は、業種・業界を問わず、非常に増えていますね」
これまで数多くの企業に対して、クレーム対応研修・コンサルティングを行っている株式会社インソース代表の舟橋さんはこう語る。

株式会社インソースを設立してからおよそ3年半経ったが、「クライアント企業からの声を聞いた実感値ですが、3年半前に比べてクレームの数は2倍以上に増えているのではないでしょうか」とのこと。

そう、未曾有の大クレーム時代と呼ぶべき時代に我々は突入しているのだ。

なぜ、これほどまでに企業へのクレーム数が増えているのだろうか? 舟橋さんはその要因として3つの“罪”(社会の大きな変化)を挙げている。

■ケータイ化の“罪”

「どこでも誰でもケータイを手にする社会になって、クレームの数が非常に増えていますね。
例えば自分が乗ったバスの運転手さんの対応が悪く、バス会社にクレームをつけたいとします。昔であれば、バスのナンバーや運転手さんの名前をメモし、電話帳で本社の電話番号を調べ、ダイヤルを回す…という長いプロセスがあったので、その間冷静になり、クレームをとりやめる人が多かったのです。

ところが、ケータイ時代の今は、クレームをつけたいと思った瞬間、バスの車内でケータイを取り出し、『目の前にいるこの運転手が〜』と電話してくる方が増えたのです」


■コンビニ化の“罪”

「コンビニエンスストアの浸透で『お店は年中無休、24時間開業していて当たり前』という意識を人々が持つようになりました。

飲食店やレンタルショップ、ディスカウントストアなどは、ほとんど24時間に近い形で営業していますし、スーパーマーケットも営業時間の延長を進めています。このようなコンビニ化の傾向は今後さらに強まるでしょう。

利便性の向上により、顧客が要求するサービスの質が高まる一方で、夕方3時や5時に閉まる銀行や役所、夜はシャッターを下ろす店舗などに対して、『なぜ休日や深夜に営業していないのか?』といったクレームが増加しています」

■ネット化の“罪”

「インターネットは、表現できる自由度が高く、普及するスピードが速いメディアです。一個人としての発言であっても、そこに興味を持った人や賛同者が現れれば、どんどんネット上で伝えられ、不特定多数の人たちに広まっていきます。
クレームを言うことができるメディアが身近になったり、増加したりしたことも、クレームが増加した大きな原因となっています。

クレームの種類は〜碓奸覆修隆覿箸砲發辰販匹なってほしい) 悪意(あの企業をとにかく困らせてやりたい) おさわがせ(企業を驚かせて楽しみたい)の3つに大別できますが、最近はが非常に増えていると言えますね」


クレームは「神の声」と思いたいが、その実態は…

クレームは、お客様からの「神の声」だと思いたい。だが、その実態は―。

舟橋さんは「クレームの中に業務改善の貴重な意見が隠れているのは、まぎれもない事実ですが」と前置きした上で、「でも、全てがすべて『神の声』じゃない。理不尽なクレーム対応に泣かされている現場の社員の方々の実例も、この仕事を通じてたくさん耳にしてきました」と言う。
「つまり、クレームの幅や内容がすごく多様化しているんです。ですから、時代によって刻一刻と変化していくクレームを適切に対処する技術を身につけること。その上で『神の声』を拾い上げて事業改善をしていくことが大切だと思います」

官公庁・大手企業が成果を上げている対応手順を特別公開

では、このような大クレーム時代到来の中で、クレームを受ける企業側には一体どのような対応術が求められているのだろうか。

舟橋さんは「クレーム対応に王道はありません」と、きっぱりと語る。高額商品に対するクレームなど難度の高い問題を解決まで持っていくには“人間力”が問われるからだ。これについては第2回以降でより詳しく紹介していきたい。

だが、舟橋さんいわく「王道なし」ではあるけれど、「基本手順は存在しますし、その順番をしっかり守ることが何よりも大切」なのだそうだ。

そこで、株式会社インソースがクレーム研修で提供し、導入したクライアント企業が多くの成果を上げてきた基本手順をここで紹介する。


基本手順1
相手の「心情を理解」してクレームをよく聴く
基本手順2
何が問題になっているか「事実を確認する
基本手順3
問題の「解決案」あるいは「代替案」を提示する

この1〜3の手順を無視して対応を進めても、良い結果は得られないのだそうだ。例えば、相手の心情を理解する前に「どういう状況で何が起こったのか?」(手順2)を聞いてしまってはいけないということ。クレーム対応では、まず相手の気持ちを十分に理解し、いかに共感できるかが最も大切である。

「心情を理解」するとは一体どういうことか? 「事実を確認する」具体的な方法とは? そして「解決案」はどのように提示すれば良いのか?
来週は、より詳しくクレーム対応術の方法に迫ってみたい。